今年のリウマチ・・・というのも、変なタイトルですけどね。まぁ、自分がふだん行っている医療の中でも、最も力を入れているわけですから、許してください。
ここ数年は、リウマチの治療は激変し、専門にしている者にとっては、ついていくのは大変な時代でした。それというのは、生物学的製剤と呼ばれる、今までの薬とは一線を画す画期的な薬品がつかわれるようになったからです。
しかし、どれだけの効果が出るのか、どれだけの副作用が出るのか、何に注意して使うべきなのかなどの基本的なことについては出尽くした感があります。もちろん、今年は新しいものも発売され、まだまだ話の種はつきません。
実際のところ今年は、それ以外では比較的あまり大きな話題はありませんでした。学会も、昨年23年ぶりに改訂された関節リウマチ分類基準の検証というのが、主な動きだったように思います。
不治の病と考えられてきた関節リウマチを「発症から6ヶ月間で治す」というフレーズが、今年のスローガンのように使われてきました。これは、発症直後に診断を確定し、即座に生物学的製剤を使用するということを意味しています。
分類基準の改訂も、このスローガンに則した物になっているわけですが、実際のところ発症直後(数週間以内)に診断をすることは大変に難しい。特に日本の保険医療の枠組みでは、ほぼ不可能といってもいいというのが現実です。
診断に重要な意味を持つ、抗CCP抗体の検査は初診ではやってはいけないことになっています。疑いを持って、最低翌月になって再検査。そこで確定できたとして、最初は古典的になりつつあるふるい内服薬からしか使えません。それから数ヶ月してやって無効と判断できれば生物学的製剤を使うことができる、というのが日本の保険医療なのです。
この時点ですでに6ヶ月くらいは余裕で過ぎているわけで、発症から6ヶ月間で治すなんてことはとうてい不可能ということです。ですから、自分の場合も、疑いが強い場合は初診で抗CCP抗体を検査する必要性をレセプト(診療報酬明細書)に必ず明記しています。
さらに内服薬も、最も効果が期待できるメソトレキセートを第一選択とし(これについてはあまりうるさいことは言われないようです)、2ヶ月程度である程度の効果を判定するように努力しています。
生物学的製剤も積極的に導入し、少しでも病気を押さえ込む可能性を高めることを考えています。さて、その次は? それがまだよくわかりません。今年は、「治った状態(寛解といいます)」とはどういう状態なのかよく議論されました。しかし、実際に実地医療の中でどのように運用していくのか、というところまでは答えが出ていないといわざるを得ません。
いかに早期に診断するかは重要ですが、すでに診断されている患者さんにとっては、どうやって治療をやめることができるのかという点がはっきりしてもらいたいわけで、来年はこの点について明快なコンセンサスが出てきてほしいと思います。