股関節は、関節リウマチでは比較的変形は少ない関節です。むしろ。ステロイド使用による副作用で、骨頭壊死という問題が生じたり、あるいは骨粗鬆症で骨折を起こしたりして手術になるケースの方が多いかもしれません。
膝は屈伸という一方向の動きだけをする関節ですが、股関節は回転するより複雑な3次元的な動きが可能。しかし、膝は周りの靭帯などに安定性を頼っているのに対して、股関節は骨と骨のかみあわせだけで安定性があります。
ただ、人工の関節となると、そのまま交換というわけにはいきません。まったく同じ大きさだと、そもそも入れるためにけずる骨の量がばかにならない。また、しっかりかみ合っていると、けっこう動きが悪くなってしまう。
そこで、実際の大きさよりはかなり小さめで、またかみあいが少ないものが使われているのです。このことは、逆に安定性が悪く、脱臼を起こしやすいというデメリットになる。つまり、動きが良いものは不安定、動きが悪いものは安定であるということ。
周囲の筋肉が弱くなっていると、人工関節を支える力が足りずに、ちょっと動かしただけで脱臼するというトラブルが起こります。手術前後のリハビリテーション、とくに手術前がとても重要ということです。
もう一つの問題は、人工関節の緩み。もともと骨盤側と大腿骨側が連結しているわけではないので、緩むのは骨盤側にはめ込んだ人工物と骨盤の間、あるいは大腿骨と大腿骨側の陣口部の間です。
当然、立ったり歩いたりして体重がかかってきて、関節を動かす事でねじれの力がかかってくるので、少しずつ骨が崩れて隙間ができてしまうことがあるのです。 痛みが出てきて分かる事もありますが、運動能力が高い若いうちに手術した方ほど定期的なレントゲンのチェックが大切です。
膝とともに、股関節も人工関節としては十分によく行われる術式ですから、普通に手術している病院であれば、どこでもそれほど問題はないと思います。ただ、関節の破壊が強い場合には技術的な困難の度合いが増しますので、ある程度リウマチを扱いに慣れている病院が安心でしょう。
自分は女子医リウマチセンターでは、主として手の手術を担当していたのですが、リウマチは全身の問題になってくるので、手だけしかやりませんとも言っていられません。膝は多いので、もう専門にしている先生にお任せしていましたが、股関節は毎月1~2例程度は手術をしていました。
手の手術と比べてもしょうがないのですが、手の比べると術野が深く、股関節に到達するための処置などがいろいろあって、ある意味手術らしい手術をしている感じが好きでした。
手の手術は今でもたまにしていますが、さすがに股関節は開業してからまったく行っていませんから、もう今さら手を出す事はできません。ちゃんとした手術ができる先生に紹介して、お願いするだけです。
ただし、膝とともに21世紀のリウマチ治療の中では、人工股関節置換術を行う事は激減したと言ってよく、しだいに珍しい手術になってきているのかもしれません。しかし中には、どうしても必要な患者さんはいるはずで、そういう技術をしっかりと継承してくれる医師が残ってくれていることを切に望みます。