・・・って、ほとんど死語に近い言葉でしょうけど、70年代の音楽好きの青少年にとっては、とても重要なことでした。
70年代初頭、ラジオ放送にFM(超短波放送)が加わり、従来のAM放送に比べて、圧倒的な高音質が売りでした。東京では、NHK-FMとFM東京の2局があって、主として音楽番組を中心に放送が行われていました。
そこで、放送される音楽を録音することをエア・チェックと呼んでいたわけですが、当時は著作権とかはうるさいことはいわなかったのか、NHKでさえアルバムを丸ごと放送するのは当たり前。
当時のアルバムはLPレコードで、新譜で2000円くらい。2枚組だと3000円、クラシックの廉価版で1000円、中高生にとっては1か月分の小遣いを丸々使う感じでした。
そうなると、出てくる興味があるレコードを何でも買うというわけにはいきませんから、当然友人との間でのレコードの貸し借りが多くなりますし、そしてFM放送の番組表をしっかり注意するようになるわけです。
留守録音とか予約録音なんてことは、少なくとも自分の周りの環境にはありませんでしたから、時間になるとオーディオ・セットの前で、カウントダウンしながら、録音準備をしたレコーダーのPAUSEボタンに指をかけて心待ちにしていたものです。
FM東京は、特に驚くべきことに海外アーティストのコンサートがあると、けっこうな頻度で丸ごと放送するなんてことがよくあったものです。
実は、今でも新譜が出ると必ず購入するMiles Davisは、最初の出会いが1973年の日本公演の放送でした。当時は電化マイルスで、ロックにはまっていた耳にも、ものすごい音の洪水がフレッシュでした。
エア・チェックができるようになったのは、カセット・テープの普及があったからです。その前までは、オープン・リール式の磁気テープ・レコーダーが主流で、家庭で簡単に何かを録音するというわけにはいきません。
カセットになって、レコーダーの大きさもコンパクトになり、テープの扱いも簡便になったことが録音を身近なものにしてくれたと言えます。
今では、AM放送の音質がよくなり、AMとFMの差はほとんどなく、番組もDJがしゃべっている方が中心。わざわざ録音しようなんていう物好きはいないでしょうし、そもそもヴィジュアル・メディアが発達した現代では、音声だけのラジオの存在意義すらも疑問視する声が聞かれのは残念ですね。