一時代前には、関節が痛いと「リウマチが出た」というような言い方がよくあって、実際かなり簡単にリウマチという診断が付けられたりもしたものです。
今は、関節リウマチの病態もかなり解明されていて、また治療方法も驚異的な進化をしていますから、より正確に診断をつけることは大変大事なことになっています。
一番指先の関節が腫れて痛くなり、しばしば変形を起こしている場合は、ほぼ老化現象といって間違いがありません。指先から始まるリウマチは無いと言ってよく、これはヘバーデン結節と呼んでいるもの。
指の真ん中の関節の場合は、加齢性によるブシャール関節と呼ばれる変形の場合と、関節リウマチによる変形の場合とがあり、簡単にどっちとは決めにくい。
外見的には、加齢性変化の場合は、ごつごつした感じで、腫れているのも関節の角の骨の隆起によるものですから、触ると比較的固い膨らみです。リウマチは、初期には滑膜炎という柔らかい組織の腫れで、皮膚と骨の間にマットが入っているような感じになります。
しかし、加齢性の場合でも、変形した関節を使いすぎると、痛みと関節周囲の腫れも出てきて、一見しただけではわかりにくい場合は珍しくありません。また、患者さんの年齢が高くなればなおさらのこと。
リウマチを専門にしていても悩むことがあるのですから、整形外科で老化ですと言われて実はリウマチだったとか、内科でリウマチと言われて実は老化だったということは珍しくありません。
この手の写真の方は、60代の女性。他の整形外科で老化といわれています。手指の老化によるヘバーデン結節やブシャール関節は、積極的な治療法はあまり無いために、ほとんどの場合痛み止めの外用薬で様子を見ることが多い。
痛みがなかなかよくならないために、当院を受診されたのですが、自分もぱっと見た感じではやはり老化だろうと思いました。でも、よく見ると、関節のところが少し赤くなっていて、患者さんも痛みが四六時中あるというのはちょっと怪しい話です。
そこで威力を発揮するのが超音波検査。簡単に非侵襲的に、すぐに腫れている関節のチェックができます。エコーで見てみると、腫れているのは関節の中からで、しかも血流の増加 - つまり炎症を示す黄色~赤色の信号が増強していました。
血液検査を見てみると、リウマチに特徴的な結果がたくさん出てきました。レントゲン写真では、典型的な加齢性変化を認めていて、最終的な診断は手指の加齢性変化が出ている方に発症した比較的早期の関節リウマチということになります。
抗リウマチ薬を使い始めることにして、数か月で赤味は減って、痛みもだいぶ少なくなり、患者さんは痛み止めの服用はしなくなりました。もっとも、加齢性変化はありますから、手指のごつごつ感は消えません。
こういう例は少なからずあるもので、第1印象だけで決めつけないで、しっかりと判別をつけることが大切です。関節リウマチという病気の診断は、早ければ早いほどいいのですが、早いほど特徴的なものはありません。後から見ると、あれもリウマチだった、これもリウマチだったということになるものです。