歌手なのに俳優、あるいは俳優なのに歌手なんていうのは、けっこう昔から珍しくありません。
芸術表現の手法は違えど、その能力に秀でた方は何をしても人々を感動させてくれる・・・わけではなく、中には聴くに堪えない歌や見るに忍びない演技というのもあったりします。
まぁ、そういう方は、他人が言うまでも無く、自分が一番良くわかっているのでしょうから、そうそう何度も畑違いの事に挑戦したりはしないもの。
一方、本当に何をしても素晴らしいという方は、次々に実績を重ねていって、独特の世界を作り上げていくわけで、いつのまにか「歌手なのに」とか「俳優なのに」という批判的な論調は出なくなるものです。
例えば、本来は歌手というところでは、ジャニーズ系のタレントの多くが俳優もやっている。人気者を登場させることで、視聴率を稼ぎたいテレビ局の意向もかなり関係しているんだと思いますが、さすがに厳しい練習をしている(だろう)ジャニーズ所属タレントは、俳優も器用にこなします。
もちろん、キムタクや岡田クンのように俳優としての大きな地位を確定させている人もいれば、中には箸にも棒にも引っかからない者もいたりする。大勢いますから、それはしょうがない。
福山雅治も、もともとはどっちなのかわからないくらい俳優としても歌手としても成功しています。自分の好みとしては、松たか子の歌手活動は大好きで、もう本当に他の歌手には無い雰囲気は、もっと高く評価されてもいいと思います。
なんか、前置きが長くなりましたが、もう一人俳優としても歌手としても独特の世界を持っているのが柴咲コウ。少女でデヴューして、ずいぶんと肩肘を張っていた感がありましたが、このところ大人の女性として随分と丸くなった。
その柴咲コウの最新アルバムは、 「こううたう」とタイトルされたカバー集。他人のヒット曲をカバーするというのは、徳永英明のVocalisシリーズ以後は特に流行っている企画です。
歌手がカバー集を出すというのは、二匹目のドジョウを狙った安易な作戦である場合が多々ありますが、主として俳優で活躍する方の場合、それなりに誰かになりきって演技をする「俳優」の延長線上にあるところが面白い。
このアルバムでも、取り上げている曲は必ずしも誰もが知っているヒット曲は少なく、ある意味オリジナル・アルバムに近い雰囲気を持っていて、それぞれの曲の中で柴咲らしさを醸し出すところが好感をもてる。
今後も、ちょっと気になるアーティストの一人というところです。