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2015年8月9日日曜日

整形外科関連講演会 @ ミナトミライ

昨日はミナトミライでの講演会に診療後飛んで行って、ちょっと遅刻はしたものの、1時間の講演を二つ聞いてきました。

最初の講演は、歯学部系の先生ですが骨粗鬆の基礎を研究している方で、日頃聞くことが少ない骨粗鬆症薬のかなり根本的な薬理についての話。

骨粗鬆症については、内服薬の中心を担っているのがビスホスホネート製剤。そして、より効果が期待できるため使用頻度が増えているのがPTH製剤という注射薬です。

それぞれが、どのように作用して骨形成に働くのかというのは、もちろんある程度は理解しているつもりですが、基礎研究の話になるとなかなか難しい。

今回は投与頻度や投与量によって、いろいろな生体内の反応があり、状況によってうまく選択をしていくことが重要であることを基礎的なエビデンスを元に解説してもらいました。

この先生は、話が大変お上手です。話し方に抑揚があり、また合間に切れ目をはっきり作ることで、話が頭に入ってきやすい。基礎系の先生にしては、話し方のツボをよく心得ている感じで、聞いていて少なくとも「わかった気分」になりました。

特にビスホスホネート関連顎骨壊死の問題に対しては、歯学の立場の先生から一定の見解があったことは興味深いところ。

歯医者さんは、ビスホスホネート製剤を服用していると歯科治療の途中に顎骨壊死を起こしやすいということで、薬の中止を求めてくることは日常茶飯事です。

しかし、実際のところ、顎骨壊死と薬の積極的な関連はなかなか証明されていないわけで、薬を中止しなければいけない合理的な説明と言うのが曖昧なままでここまできている状況です。

数年前にこの問題に対する「ポジションペーパー」というものが、複数の関連学会が集まって発表しています。この中で、理論的根拠が明示されないまま、一定のリスクがあるのなら「休薬が望ましい」、あるいは「中止する」といったガイドラインが提示されました。

つまり、ボジションペーパーでは、最終的には口腔管理の重要性を示しているものの、疑わしきは罰するという立場をとっている。しかし、一般的に、顎骨壊死の発生頻度と骨粗鬆症の方の骨折の頻度では、骨折の方がリスクが高いと言われています。

顎骨壊死の病態は骨髄炎であり、「感染症」が関与していることは明らかで、薬が悪化させるリスクになることはあっても、主たる原因と考える事には抵抗があるというのは、大方の医師が感じていることだと思います。

今回の話の中では、壊死部の細菌の存在を病理的に示し、基本的に細菌感染が主要因であり適切な歯科処置と口腔ケアの重要性に言及した上で、ポジションペーパーの改訂の必要性が示されました。

さて、もう一つの講演は高齢者の脊柱変形について。有名私大の新任教授による講演でした。高齢者では、加齢による椎体骨変形、骨粗鬆症による圧迫骨折、筋力低下などのいろいろな原因で大きく背骨が前に倒れたり、後ろに反ったり、あるいは横にゆがんだりすることがしばしばあります。

これらに対して、基本的には保存的な治療が中心にはなるのですが、場合によっては手術を選択することがあり、その具体的な手技などが紹介されました。

一般的な保存的治療については、一定のエビデンスは無いとして、特に目新しい話はありませんでした。手術を行うというのは、かなり条件を厳しく制限した上での選択ですから、そうそうめったにあるとは思えません。

内容的には、あまり参考になる話ではなかったと思いますが、それよりも最初の先生と際立っていたのが話し方。

さすがにあの大学の教授になる先生ですから、大変自信に満ちた口調なのですが、抑揚がなく文と文の間がほとんどない。聞いていて、話の切り替わりがわかりづらく、いつのまにかどんどん話が先に進んでいる感じでした。

自分の場合は、さすがに人前で話す機会はほとんど無くなりましたが、こういう対称的な二人の演者の話を同時に聞くと、相手に理解してもらう話し方という点で、大変参考になりました。