地上を外交戦略で平和的に手に入れたアマテラスは、実質的な葦原中国の運営を長男、天忍穂耳命(アメノオシホミミノミコト)に命じます。しかし、オシホミミは天下る準備中に子供が生まれちゃったので、そっちを遣わせましょうと提案。
どうも、オシホミミはオオクニヌシとの交渉の時も一番手でいながら、途中で戻ってきてしまうし、今回ももっともらしいけど、釈然としない理由で任務放棄した元祖日和見族という存在です。
オシホミミのこどもの名前は日子番能邇邇芸命(ヒコホノニニギノミコト)で、母親はアマテラスのお目付け役の高木神の娘であり、またアマテラスの知恵袋である思金神(オモイカネノカミ)の妹です。
タカギの孫ということですが、アマテラスからしても孫にあたるに少年ニニギが地上に降りるということで、この一連のエピソードは「天孫降臨(てんそんこうりん)」として知られています。
とりあえず高天原オールスターズで下っていくと、途中に高天原から葦原中国まで照らす者がいる。アマテラスは天宇受売神(アメノウズメノカミ、日本初のストリッパー)に調べてくるように命じます。
すると、名前は猿田毘古神(サルタビコノカミ)で、天孫降臨の道案内をしたいと言っているとわかります。そこでアマテラスは、オールスターズの中から選りすぐりをニニギの御伴に指名して、三種の神器を授け見送りました。
この時サポートチームに選抜されたのは、オモイカネ、手力男神(タヂカラオノカミ)、天石戸別神(アメノイワトワケノカミ)、そして天岩屋戸事件で活躍したウズメら五柱神でした。そして、ニニギ一行は、竺紫(つくし)の日向の高千穂の霊峰に降り立ちました。
高千穂は「高々と稲が積みあがる」場所であり、日本人の主食が稲であることを示しているようです。高千穂が、現在の宮崎県の高千穂峡なのか、鹿児島の高千穂峰なのかは意見が分かれています。
さらに、福岡にも日向という地名があって、後の話の展開を考えると、宮崎・鹿児島は無理があると考える学者も少なくありません。
・・・って、よく議論の対象になるようなんですが、別に基本的な問題があると思うんですが、あまりそのことに答えた文章が見つからない。こっちの勉強不足なのかもしれませんが、国譲りで手に入れたのは出雲なのに、なんで降臨したのが九州なのかという点が不思議です。もっとも、そのあたりを素直に受け入れないと、全編にわたって矛盾だらけですから、とても読んでいられませんけどね。
高千穂峰には、いつ誰がやったのか不明の逆さに立つ剣(天逆鉾)が有名。イザナキ・イザナミが天浮橋から地表を掻き回した天沼矛(あめのぬぼこ)のことと言われていますが、国譲りの際にオオクニヌシから送られ、ニニギが山肌に突き刺したともいわれています。
天逆鉾は奈良時代からあったようですが、霧島の噴火により折れて現存するのはレプリカだそうで、いつ折れたかもわからない。折れた部分は行方不明で、一説では伊勢神宮にあるとも言われています。なんと、坂本竜馬がこれを引っこ抜いたことがあるなんて話もあったりします。
ニニギの命により、ウズメ改め猿女君(サルメノキミ)は役目を果たしたサルタヒコを送っていきます。ところが、伊勢の阿邪訶(あざか)で、サルタヒコは貝に手をはさまれ海に沈んでいました・・・って、溺れたんかい!!
サルメはちゃっかり帰ってきますが、「魚たちはみんな天孫に仕える」とだけ報告しています。これは魚が食材になることを了承したということで、伊勢の隣、志摩の豊富な海産物ほ指しているようです。
ただし、海鼠(なまこ)だけ返事をしないので小刀で口を切ってきた。ナマコの口が裂けているのはそのせいだと・・・そんなことよりサルタヒコが気になるんですが、その後どうなったという話は出てこない。とりあえず、伊勢神宮内宮近くで専用の神社に「道開きの神」として祀られました。
さて、成長したニニギは笠沙の岬で大山津見神(オオヤマツミノカミ)の娘、木花之佐久夜毘売(このはなのさくやひめ)と出逢い、またも繰り返される一瞬で惚れてプロポーズする事態。
オオヤマツカミは喜んで、姉の石長比売(いわながひめ)をセットにして嫁入りさせました。ところが美人のサクヤヒメに対して、イワナガヒメは超がつくブス。ニニギはイワナガヒメを送り返します。
頑丈な命を保証するイワナガヒメを返したことで、天皇の命は木の花のようにもろくはかなくなった・・・寿命に限りがあることになった、つまり「人」と同じ理由の起源になりました。
サクヤヒメはやがて妊娠しますが、ニニギは妊娠が早過ぎで、元彼の子じゃないかと疑います。サクヤヒメは不貞の子なら無事には生まれないと言い、出入り口を塞いで火を放った御殿の中で出産し身の潔白を証明しました。でも、もしも元カレの子の場合は、結婚前で「不貞」ではないから、どっちにしても無事に生まれるんじゃ・・・
サクヤヒメは安産と火消しの神として祀られ、さらに富士山の頂上から桜の蒔いて全国に広めたということになっています。一方、イワナガヒメは妹を呪って引きこもり人生を送ったとの話もありますが、永遠の命の象徴として祀られたりすることになりました。