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2019年7月9日火曜日

khatia buniatishvili / Schubert (2019)


Sir John Everett Millaisは19世紀のイギリスの画家で、特に有名な作品が「オフィーリア」です。川の流れに浮かぶ「ハムレット」のオフィーリアを題材にしたこの作品は、ラファエル前派、ビクトリア朝の代表作とされています。

そのオフィーリアを実写化したようなCDジャケットに思わず目が留まりました。若手注目ピアニストの一人、カティア・ブニアティシブリの今年の最新作。なんと、自分も一番お気に入りのシューベルトのロ短調ソナタ(D.960)を収録となれば、もう聴かないわけにいかない。

ピアノ奏者にとって、難曲であるこのソナタをどのように料理するかで、その奏者のシューベルトに対するアプローチがだいたいわかる気がします。

さて、カティアはこの曲をどのように演奏したか・・・結論をいうと、自分にとってはジャケットは100点ですが、内容は80点くらいというところ。80点は合格ですけど、いろいろ聴いてきたシューベルトの中ではベストにはならないということ。

冒頭、最弱音から不穏な不協和音を響かせるあたりのつかみは悪くない。カティアの持ち前の、ダイナミックでミスタッチを恐れない鍵盤を「弾き倒す」勢いはもしっかりと封印しました。

その後、何度も繰り返し登場するテーマを、いろいろなアプローチで処理していく様は見事という感じ。情感たっぷりに聴かせる系統なら内田光子のシューベルトが最高傑作とされていますが、ただし、ここではバーチュオーゾぶりが目立ち過ぎた。

シューベルトなんですが、リストを聴いているような錯覚に陥りました。もっとも、その方がカティアらしいといえばそうなんですが。シューベルトは、最後の最後まで悩み続ける欝々とした雰囲気が似合う。明るい曲調の楽章でも、根底にあるのは暗さ。そのあたりの解釈の仕方が、自分と少しずれているところが減点理由。

カティアが弾くとこうなるという意味では、成功したアルバムだとは思います。そして、今後は、さらにシューベルトに挑んでもらいたいと思わせることには成功しています。