2020年11月11日水曜日

007 / ダイヤモンドは永遠に (1971)

映画ジェームス・ボンドのシリーズとしては第7作、第5作「007は二度死ぬ」で役からの引退したショーン・コネリーが、莫大な出演料はすべて国際基金に寄付し、希望する2作の映画製作の約束を取り付けて復帰しました。

監督は「ゴールドフィンガー」に続いて2度目のメガホンをとるガイ・ハミルトンで、前作のシリアス路線から一転、ギャグ色が強い荒唐無稽感が強調されました。そして、出たとこ勝負のいい加減な設定が目立ちます。

せっかくコネリーが復帰したものの、はからずもコネリーが自ら感じていたように、がんばるほどボンド役をこなすには年を取ってしまったことを証明した作品ということもできる。

プレタイトル・シークエンスは、前作ラストで結婚したばかりで、宿敵ブロフェルドに新妻を殺されたボンドは、怒りに任せてブロフェルドを探しまわり、ついには倒します。そこにはボンドらしいスマートさは無く、復讐のため怒りに任せて感情的に動く男でしかありません。

これだけ見ると、これまでのシリーズで描いてきたボンド像とはかなり異質で、正直戸惑います。ところが本編に入ると、途端にイギリス紳士に戻っている。初めてこの映画で007を見る人なら、かなりキャラクターに混乱すると思います。

今回はダイヤモンドの密輸事件に絡んで、ラスベガスに乗り込んだボンドが、大富豪(ハワード・ヒューズがモデル)に成りすましたブロフェルドと対決するという話。ブロフェルドは影武者をたくさん用意していて、映画冒頭で殺したのも影武者の一人だったということ。

密輸したダイヤモンドは強力なレーザー光線を発生させるために利用され、宇宙船に搭載し世界中を恐怖に陥れるという計画。「二度死ぬ」では自前で打ち上げロケットを用意していたスペクターですが、今回は大富豪の研究所を利用して経費削減ということらしく、このあたりの描写自体もほぼ省略され映画としてもスケールが小さくなった。

ブロフェルドを演じたのは、「二度死ぬ」ではボンドに情報提供してすぐに殺されたチャールズ・グレイ。グレーの服で白猫を抱いているところは相変わらずですが、ドナルド・プレザンスやテリー・サラバスに比べると、インパクトは落ちます。

最後はボンドの勝利ですが、ブロフェルドの死亡は確認されずに今後の展開につなげています。しかし、原作では敵はゴールドフィンガーの弟だったのをブロフェルドに変更していたため、またもや権利関係のトラブルを巻き起こし、スペクター、ブロフェルドは映画で使用できなくなってしまいました。

ボンド・ガールは基本的に一人で、密輸グループに所属して序盤から登場するジル・セント・ジョン。途中ボンドに絡んでくる女性が殺され役ですが、その存在価値はなんだかよくわからない。

ショーン・コネリーのジェームス・ボンドは基本的にこれで終了で、当初の肉体的アクション路線から、小道具に頼りユーモアを多用する路線に変わったことで、役目は終了したと言えそうです。この後、ロジャー・ムーアがこのボンド像を引き継ぐことになります。