年末年始診療 12月29日~1月5日は休診します

年内は12月28日(土)まで、年始は1月6日(月)から通常診療を行います

2020年11月20日金曜日

007 / オクトパシー (1983)

前作「ユア・アイズ・オンリー」で原点回帰したシリーズでしたが、ロジャー・ムーアも54才で、さすがにボンド役に疲れたのか、ついに降板を表明しました。しかし、イオン・プロダクション以外で、初代ボンドだったショーン・コネリーを担ぎ出した「サンダーボール作戦」のリメイク(「ネバー・セイ・ネバー・アゲイン」)が発表され、プロデューサーのブロッコリは莫大な出演料を提示してムーアを引き留めて作られたのが本作。

最終的な興行収入はコネリー復帰作を上回り、本家としての面目はたもちましたが、内容的には評価は高くなく、人気にも翳りが見え始めた作品になってしまった感があります。監督は前作に続いてジョン・グレンが担当しました。

今回も原作は短編で、「オクトパシー」と「所有者はある女性」の二つを合わせたような内容。このあたりは、ネタ切れ感にもつながっているようです。

プレタイトル・シークエンスは、今回は本編とは無関係のショート・ミッション。本物のミニ・ジェットで敵を翻弄する辺りはボンドらしくいていい。また最後に燃料切れで、付近のガソリン・スタンド前によって「満タン!」という落ちも気が利いています。

結局、かっこいいんですが、いずれも特殊撮影は最小限で、肉体的なスタントによるアクションということに尽きる。中年ボンドでは、ムーア本人によるアクションに期待するのが無理というもので、見ている側も「誰か」がやっているサーカス的なアクロバットに食傷気味になっているのかもしれません。

当時の世界情勢は、1979年にソビエト連邦がアフガニスタンに侵攻し、東西冷戦は緩和に向かっていた雰囲気を再び緊張に戻していました。さすがに表立ってソビエトを悪者にしてこなかった007シリーズでしたが、ここに来てついにあからさまにソビエトの侵略政策としてストーリーを組み立てました。

ただし、連続登場となるゴゴール将軍のように、ソビエトの中に西側との協調路線を考える人がいることを強調して、あくまでもソビエトの中でも悪人が仕掛けたことという形式をとって配慮することも忘れてはいません。

ソビエトのオルロフ将軍は西側への敵対姿勢を積極的に支持する一方で、国宝級の宝石の偽物を作らせ本物とすり替え私腹を肥やしていました。それらの宝石類をサーカスにまぎれて密輸し、西側に運ぶのがオクトパシーと呼ばれる女性と彼女が訓練したアクロバット集団でした。

オルロフとオクトパシーの仲介をするのがカルマ・カーンという悪党です。オルロフとカーンは、オクトパシーには秘密で宝石を核爆弾にすり替えて、西側のアメリカ軍基地で爆発させ、戦争を起こそうという計画でした。

オクトパシーを演じるのは、「黄金銃を持つ男」で殺されてしまう役だったモード・アダムス。前半でボンドと絡むのはオクトパシーの部下でクリスティナ・ウェイボーンで、ここでも二人ともスウェーデン出身の女優が選ばれています。

カーチェイスにしても、列車の上での格闘にしても、さらには飛んでいる飛行機の上での格闘などの目を見張るスタントがたっぷり出てきます。しかし、ボンドがターザンばりの奇声を発して木のつるを連続でつかんでいくとか、ゴリラの着ぐるみを着たり、最後はピエロのメークで変装するとか、ギャグとしても笑うに笑えないシーンも多く困惑します。

それでも、シリーズはさらにムーアを使って次回作を用意していました。