2020年11月17日火曜日

007 / ムーンレイカー (1979)

イギリスの諜報部員、殺しの許可証を持つ男、007、ジェームス・ボンド。このキャラクターを想像したのはイアン・フレミングであり、彼の著した小説が映画の原作であることは今更言うまでもない。


フレミングの原作を並べてみると、長編小説として出版されたものは、発表年順に
カジノ・ロワイヤル
死ぬのは奴らだ
ムーンレイカー
ダイヤモンドは永遠に
ロシアから愛をこめて
ドクター・ノオ
ゴールドフィンガー
サンダーボール
私を愛したスパイ
女王陛下の007
007は二度死ぬ
黄金銃を持つ男
以上の12作品。

後は2編の短編集があり、これらに含まれるのは
バラと拳銃 From a View To A Kill
読後焼却すべし For Your Eyes Only
危険 Risico
珍魚ヒルデブラント The Hildebrand Rarity
ナッソーの夜 Quantum of Solace
オクトパシー Octopussy
ベルリン脱出 The Living Daylights
所有者はある女性 The Property of a Lady

「カジノ・ロワイヤル」だけは他プロダクションが映画化したので、イオン・プロが関係するシリーズとしては、第11作となる本作で長編のタイトルは使い切ったことになります。

この後に続くシリーズは、短編集からのタイトルを使ったり、モチーフを組み合わせてのものになる。そういう意味で、ロジャー・ムーア後の作品については、ある意味別物と考えてもいいと思っています。つまり007らしきキャラクターを用いた映画オリジナルの作品ということ。

とは言っても、ここまでの作品でも原作に忠実な物もありますが、かなり設定を変更した物、登場人物の名前だけ用いた物、タイトルだけ借りて内容はほぼ別物などという具合に、映画は映画なりに独創的な展開をしてきています。

本来は「私を愛したスパイ」の最後で、次回作は「For Your Eyes Only」と予告していたのに、SFブーム到来で急遽、この「ムーンレイカー」に差し替えました。悪人のドラックスという名前は一緒ですが、原作の原子力潜水艦にまつわる陰謀をスペースシャトルに置き換え、遂にはボンドを宇宙に送り込むという大胆な内容変更をしています。

ブレタイトル・シークエンスでは、飛行機の中で襲われたボンドはパラシュート無しで落下。先に飛び降りていた敵のパラシュートを空中で奪い取ると、今度は前作で死ななかったジョーズが襲い掛かってくるという、CG無し、VFX無しの決死のスタントが凄い。

ドラックスは、密かに宇宙基地を作り、そこに選ばれた男女を移し、地球上の全人類を毒殺して新しい世界を作ろうという狂気にかられた億万長者です。そのためにスペースシャトルを開発したのですが、一機が故障したため、すでに政府に納入していたシャトルをハイジャックして奪ったため、ボンドの登場を許してしまいました。

ドラックスのパイロットで登場する一人目のボンドガールは、「O嬢の物語」でセクシー女優として一躍有名になったコリンヌ・クレリーですが、ボンドに協力してしまい、あっさり殺されてしまいます。そして、ドラックスの研究所に先に潜入していたCIAのメンバーとして、最後までボンドと闘うのがロイス・チャイルド。

ボンドが宇宙空間にいるだけでも荒唐無稽の極みなのに、何しろ宇宙でレーザー銃でドンパチするわけですから、「スター・ウォーズ」、「スター・トレック」も真っ青という感じ。それでも、スペース・シャトルのリアリティはNASAにも協力してもらって、かなり本物らしくなっているという評判でした。

ちなみに敵の研究所の扉を開けるキーコードが奏でるメロディは、「未知との遭遇」でお馴染みのあのメロディ。