2020年11月14日土曜日

007 / 黄金銃を持つ男 (1974)

ムーア・ボンド第2作で、前作に続いてガイ・ハミルトンが監督。

今回の目玉は、ドラキュラ俳優で有名だったクリストファー・リーが悪役で登場するところ。ボンドのもとに「007」と刻印された黄金の銃弾が届くことで、黄金銃の使い手として知られる殺し屋スカラマンガからのボンド抹殺予告と考えられました。

ちょうどイギリス諜報部が追っていた太陽エネルギー転換装置をスカラマンガが手に入れたことで、ボンドはスカラマンガの本拠地に乗り込んで活躍するという話で、主な舞台は香港・クカオです。

公務員(の割にはセレブな)のボンドに対して、スカラマンガは殺人料は高額。イギリスに対する愛国心から時には殺しも辞さないボンドに対して、スカラマンガは殺人をゲーム感覚で享楽している。スカラマンガは、ボンドとの対決を望み楽しんでいるという状況。

こういう設定は今までにはなかったところで、勝利して優越感に浸りたいことからボンド個人に危害を加えたいという悪人はスカラマンガが初めてです。

そして中年ボンドの肉体的アクションはたいしたことはありませんが、今回見どころとなるアクションはカーチェイス。川を渡りたいボンドが、傾いて崩れた(ように設計された)橋を使って、向こう岸に一回転して着地するというトリッキーなスタントは一見の価値があります。

この撮影の数年前に香港湾で原因不明の火災で全焼した豪華客船、初代のクイーンエリザベス号の残骸がイギリス諜報部の出張所として活用されているというのは面白い。数年後には撤去されているので、傾いた無残な姿が記録されているのは貴重です。

ボンドガールは二人。ボンド側の女性諜報部員で、ピター・セラーズの奥さんだったブリット・エクランドは、可愛いけどドジな役柄で、コメディ・リリーフ的な立ち位置。モード・アダムスは、スカラマンガの愛人で裏切ったために中盤で殺されてしまいます。二人ともスウェーデン出身で、アダムスはこの後「オクトパシー」で主役として再登場しました。

前作に続いて、がさつでまぬけなアメリカの保安官のペッパーが登場します。話の本筋とは無関係ですが、怒鳴り散らしているだけの台詞が増えている。こういうキャラのギャグは品を落としているだけで、映画にとってプラスになっているとは思えません。

まぁ、今回も何度もボンドを殺せる機会があるんですが、結局ボンドが長生きできているのも、悪役がかっこつけて凝ったことをしようとして自滅しているだけという結果を再確認できます。