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2020年11月9日月曜日

007は二度死ぬ (1967)

1966年3月5日、イギリスの旅客機が乱気流のため空中分解し富士山麓に墜落した事故が発生しました。この機体には007映画の撮影を終えたスタッフが多く乗り込んでいたのです。

搭乗予定には、シリーズを制作していたハリー・サルツマンとアルバート・ブロッコリ、監督をしたルイス・ギルバートら主要スタッフも含まれていましたが、離陸2時間前に急用によりキャンセルし難を逃れました。

彼らが搭乗していたら、007シリーズはこれで終了していたかもしれません。そんなエピソードも含めて、ほぼ全編を日本で大規模なロケを行って作られたこの第5作は、特に日本人としては特別なものとして見てしまいます。

フレミングの原作からは、タイトルと登場人物の名前を拝借していますが、同名小説とはストーリー的にはほとんど無関係。アメリカとソビエト連邦の宇宙船が拿捕される事件が発生し、両国は互いに相手国の陰謀として戦争勃発の緊張を強いられます。謎の宇宙船が日本から飛来しているらしいという情報により、ジェームス・ボンドは秘密裏に日本に潜入するのですが・・・

日本でのボンドを助ける秘密組織のリーダー、タイガー田中に丹波哲郎。ボンド・ガールは前半でボンドを助ける田中の部下として若林映子、後半でボンドと偽装結婚する浜美枝が登場します。

1962年の「キングコング対ゴジラ」で共演していた二人の女優が指名されたもので、もともとは二人の役柄は逆だったのですが、浜の英語力が問題となり交換されたもの。確かに若林の方が、外国映画の経験が多くエキゾチックな容姿はボンド・ガール向いている感じです。

1964年の東京オリンピック後の都内の様子がたくさん映像として登場するあたりは、大変に興味深いところ。地下鉄丸ノ内線がタイガー田中の私的移動手段だったり、ホテル・ニューオータニが敵の隠れ蓑の大企業だったりします。極めつけは、かの姫路城が田中の忍者養成所というのは凄い設定。

これらは、当然空想の産物で現実性は皆無といっていいわけですが、昔の海外の映画の日本の描き方はアジア全体がいっしょくたであることが多いのですが、比較的正しく日本を紹介できているので違和感は少ない。

戦争に起こして一儲けをたくらむのはお馴染みのスペクター。「ロシアより愛をこめて」、「サンダーボルト作戦」で白猫を膝にのせて顔を出すことが無かった首領のブロフェルド(ここでは演じるのはドナルド・プレザンス)がついにスクリーンに容姿を現します。

ブロフェルドは最後に自らの基地を爆破させ逃亡し、今後もボンドを苦しめることになるのですが、一つ飛ばしてコネリー最後のボンド役となった第7作では、今回ボンドに情報を提供し、タイガー田中との間を取り持つヘンダーソン役のチャールズ・グレイがブロフェルドとして登場します。

全体的には荒唐無稽さがパワーアップし突っ込みどころ満載ですが、スピード感が戻って良質なアクション娯楽作品となりました。ただし、コネリーはこの映画の前にボンド役は飽きたと公言し、この作品が最後となるため、シリーズとしては大きな転機を迎えることになるのです。