2020年11月4日水曜日

真昼の死闘 (1970)

クリント・イーストウッドにとっては、マカロニ・ウエスタンで人気が出てハリウッドに凱旋してから「奴らを高く吊るせ」に続く2作目の西部劇。そして、ドン・シーゲル監督とは、「マンハッタン無宿」以来の2回目の作品ということになります。

邦題はバリバリの西部劇のようなタイトルですが、原題は「Two Mules for Sister Sara」で、直訳すると「尼僧サラの2匹のラバ」。一匹はサラが乗るために連れているラバそのものですが、もう一匹は頑固者(mule)のイーストウッドのことでしょう。

サラを演じるのはシャーリー・マクレーンで、1955年にヒッチコックの「ハリーの災難」で銀幕デヴューして以来、すでにハリウッドでは人気女優ですから、当然イーストウッドより格上。タイトルの名前の登場もイーストウッドより先です。

ひょんなことから、フランス軍により迫害されていたメキシコ・ゲリラを援助している尼僧の姿をしたサラ・・・実は娼婦のあばずれと一緒に旅することになったイーストウッドが、フランス軍陣地にダイナマイトを投げ込んで大暴れするという話。

はっきり言って、ここでのシーゲルの演出は緩い。間延びしたシーンが多く、スピード感が感じられません。B級アクション映画が得意なシーゲルとしては、何をもたもたしているんだと文句を付けたくなる(シーゲルはスタジオから編集権をもらえなかったらしい)。

機関車がダイナマイトの爆発で端から落ちていくところとか、最後のフランス軍とメキシコ・ゲリラの大規模な戦いとか、アクション・シーンとしては見るべきものは無いわけではないのですが、それ以上にはなりません。

そして、西部劇と言っても、やっつけられてスカっとするような悪役がいないことが、最大の敗因かもしれません。メキシコ人を銃殺するシーンは途中であるんですが、相手のフランス軍の蛮行のようなものがはっきりと描かれていないので、どうもぱっとしない。


偽物の尼僧であるマクレーンの往年のおちゃめな演技はいいんですけど、やはり西部劇向きの女優さんとは云い難い。イーストウッドも、マカロニ・ウエスタンの二番煎じのような感じですし、まぁイーストウッド・ファンだけが見ておけばいいかなというところ。

本当にイーストウッドが真価を発揮するのは、翌年の1971年のことになります。