正真正銘、これがスティーヴン・スピルバーグの劇場用映画の第1回監督作品で、興業的には成功とは言えませんでした。
・・・なんですが、ここで英語のタイトルをのせたのは、あまりにも邦題がひどすぎるから。スピルバーグはこんなタイトルで日本で知られているってしっているんでしょぅか。
何しろ「続・激突!/カージャック」って、誰が考えたのかあまりと言えばあまりにタイトル。確かに日本で公開されたのは、劇場用「激突!」が最初ですが、車が関係するからって続編でもなんでもない。
多少知られた「激突」を使いたい気持ちはわからないわけじゃないけど、邦題だとかなり勘違いをしてしまうので、使わずに済むならそれにこしたことはない。
1969年におこった実際の事件を元にしたストーリー。窃盗で捕まった夫婦。妻のルー・ジーンが先に出所したら、2才の息子の親権は剥奪されて里子に出されていました。夫のクロヴィスは、監視の緩い更生センターにあと4か月拘束されている身分でしたが、ルー・ジーンは息子を取り返すために無理やり脱獄させます。
勘違いからスライド巡査を人質にパトカーで逃走することになり、そのあとをたくさんの警察車両、報道の車、あるいは野次馬の車がついていく事態になってしまう。指揮を執るターナー警部は、二人の犯行動機、そして自分も犯人を殺したことはないという理由から、ある程度二人を自由にさせます。
スライド巡査もターナー警部も、しだいに一緒に旅をする仲間のような雰囲気の中で、それぞれの立場をふまえた上で理解するようになっていく。多くの民衆が、二人を応援し、同情することがさらにかれらの意志を固い物にしていくのです。
目的地であるシュガーランドにある里親の家に到着した時に、スライドは様子がおかしので罠だと警告します。しかし、もう息子のことしか考えが及ばない興奮したルー・ジーンは、クロヴィスを行かせます。しかし、そこには狙撃手が待機していて、背部から撃たれたクロヴィスは何とか車を発進させます。
近くの川原で停止したパトカーに、ターナーが駆け付けると、そこには絶命したクロヴィスと、茫然自失となったルー・ジーンがいました。スライドは「彼らには銃は必要なかった」とターナーに言います。
ルー・ジーンを演じたのは、すでに知名度の高かったゴールディ・ホーン。ちょっとおバカなコメディを得意するホーンは、ここではシリアス度を増した役柄ですが、何も後先考えずに、息子を取り返したいの一心が、自然にうまくユーモアも醸し出し、映画全体のテンションを牽引しています。
冷静だか温かいところもあり、でも最後に射殺を選択するターナーを演じるのはベン・ジョンソン。名だたる西部劇に出演してきた名優です。強引な妻にうまくあしらわれる、ちょっと気弱なクロヴィス役のウィリアム・アザートンは、この映画以降がぜん注目されるようになりまし。
スピルバーグは、二人を悪者に見せないように、むしろ観客を味方につけるような演出をしています。通過する町で二人を応援する人々は、観客の気持ちを代弁しているかのようです。そして、追う警察側も敵に回すことは無く、主要登場人物全員を応援したくなるように話を組み上げました。
後をついていく車の台数がしだいに増えていって、終盤では数百台になるところは圧巻ですし、劇場用映画の初監督作品としては、十分すぎる出来だと思います。
しかし、観客を味方につけた主人公に最後に待っていたのは救いのない悲劇だったことが(事実が元だからしょうがないのですが)、興業的に残念な結果になった要因かもしれません。
ただし、スピルバーグ自身が述べているように、この映画で音楽を担当するジョン・ウィリアムスと出会ったことは、後々まで彼の財産となったことは忘れてはいけません。
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