32本。
スティーヴン・スピルバーグが監督した映画の本数です。
あれ、少ないんじゃないかと思いますよね。もっと、スピルバーグの名前を冠してヒットした映画があったはずだと。
スピルバーグは、1946年生まれで現在73才。1971年にテレビ・ドラマ(刑事コロンボ・シリーズ)で初監督をしてから、来年で50年。
50年で32本は、けっして少ないわけじゃなくむしろ多作と言ってもよいのですが、自ら監督した作品より、制作(プロデューサー)あるいは製作総指揮(エグゼクティブ・プロデューサー)として関わったものがものすごい量になる。
職業監督として、プロデューサーの思惑通りに、与えられた脚本と決められた俳優を使って映画を作る人がいますが、スピルバーグは早くから自らの映画会社を立ち上げ、自分が思ったように映画作りをする映画作家の一人になりました。
以前に映画作家として、チャップリン、ヴィスコンティ、ヒッチコック、キューブリック、そして黒澤明の5人をあげて全網羅すべきという思いを書きました。最近では、これに是枝裕和が加わっています。
昔から、ほぼリアルタイムで楽しんできたスピルバーグですが、どうしても一部のこどもっぽい作品により、何となく避けていた部分があります。そこで、7人目としてスピルバーグも加えていくかどうか、監督作品に絞ってじっくりと鑑賞してみたくなってきました。
スピルバーグが最初に注目されたのは、元々はテレビ映画として作られた1971年の「激突(Duel)」で、好評により劇場公開されたため初監督作品と位置付けられています。
1975年には「ジョーズ」の世界的なヒットで、その名を一気に広めることになり、「未知との遭遇」、「レイダース失われた聖櫃」と立て続けに話題作を送り出しました。
そして1982年の「E.T.」によりアメリカ映画界を支える無くてはならない存在として確固たる地位を不動のものにすると、「カラー・パープル」、「太陽の帝国」、「オールウェイズ」などの人間ドラマ主体の映画作りに本腰を入れるようになります。
1993年の「シンドラーのリスト」で人を描くことの最初の頂点に達した後は、「アミスタッド」、「プライベート・ライアン」のような人間ドラマと「ジュラシック・パーク」のようなファンタジー物を織り交ぜて発表するようになりました。
21世紀になってもその傾向は続き、近未来的なファンタジーである「マイノリティ・レポート」、「レディ・プレイヤー1」、人間ドラマである「ターミナル」、「ブリッジ・オブ・スパイ」、「ペンタゴン・ペーパーズ」、歴史的な視点から重厚な「ミュンヘン」、「リンカーン」、さらには3DCGアニメなども発表し、バラエティに富んだ制作意欲は衰えることを知りません。
製作総指揮で関与した物には、「グレムリン」、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」などファンタジー系が多いため、どうしてもVFXを多用したエンターテイメント作家してのイメージが強くなります。
しかし、あらためて監督作品を思い浮かべると、そういった最新技術をうまく利用しているものでも、人を描くことが映画の根底にいつもあるということが言えそうです。登場人物をちゃんと描くことで、見ている者は感情移入でき、より見終わった後の感動を深くするものです。
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