2020年11月13日金曜日

007/ 死ぬのは奴らだ (1973)

「ダイヤモンドは永遠に」を最後にショーン・コネリーはジェームズ・ボンド役を引退し、その後の3代目ボンド(2代目は一作だけのレーゼンビー)を引き受けたのがロジャー・ムーアでした。

6作に出演したコネリーは、4作目あたりからは明らかに年齢的な限界を見せ始め、最後はかなり年老いた感じがしていました。しかし、実はムーアはコネリーよりも3歳年上で、撮影時は40代半ば。

激しい肉体的アクションは期待できず、前作で強調されたギャグ路線を引き継ぎ、おしゃれな伯父様が、いろいろな小道具と大仕掛けなスタントで見せ場を作るという感じ。そもそも監督も同じガイ・ハミルトンですしね。

テーマ・ソングを歌うのはポール・マッカートニーで、これもかなり話題になりました。「ゴールドフィンガー」でボンドは「ビートルズを聴くには耳栓が必要」と言っていたくらいですから、時代がかわったというところでしょうか。

権利トラブルで「スペクター」、「ブロフェルド」を使えなくなったため、ムーア・ボンドの敵は毎回いろいろな犯罪者になります。その第一弾は、カリブの小国の大統領であるカナンガ。彼はニューヨークではMr.ビッグと名乗り麻薬で巨額な利益を出す計画を遂行していたというもの。

カナンガを調査していた諜報部員が立て続けに抹殺されたため、ついにボンドの登場となるわけですが、カナンガは民間信仰であるヴードゥを利用しており、ヴードゥの巫女でタロット・カードを使った占いをするソリテア(ジェーン・シーモア)が今回のボンド・ガール。ボンドと恋に陥ると占いに出たためカナンガを裏切ることになります。

ニューヨークのハーレム、カリブ海の島が主な舞台で、ボンドとソリテア以外はほとんど黒人というのも、今までにはなかったところ。セスナ機を走り回らせたり、モーターボートでの追跡シーンなどの新機軸はありますが、ムーアが直接やっているわけじゃないので、遠目にそれらしいスタントマンで、なおかつやたらとシーンが長いのは退屈です。

敵の本拠地にいとも簡単に乗り込んで、ソリテアのタロットをいじれたりと、相変わらずのご都合主義がたくさんあります・・・って、文句ばかり言っているようですが、とりあえず007シリーズを続けることができるだけの仕上がりにはなっています。

ボンド役が一新されたことで、シリーズとしては気分が若返った感じがしますし、はっきり言ってコネリーよりも男前のムーアが、意外と違和感なく役に溶け込んでいるように思います。

コネリーは最初はヒットさせるという気概が十分で力がはいっていましたが、シリーズ化によりだれてきた部分は否定できない。ムーアは出来上がった世界観を崩さないようにおとなしくスタートして、本領を発揮するのはこれからだというところでしょうか。