2022年5月5日木曜日
イタリア・ワインの話 3 品種で選ぶ
ワインを選ぶ時、難しくしているのが呼び方の問題です。そもそもワインには、商品名という固有の呼称があるようで無い。これは原産地呼称統制という格付けの関係で、法律的に決められた名称が用いられ、一定の地域で採取された一定のブドウを使い、そして一定の方法で醸造すればどの生産者でも同じ呼び名になる。
つまりワインの呼び方は、商品名よりも一般名が優先されていて、格付けされたものでは生産者(メーカー)の名前は二の次です。日本ではメーカーの名前で呼んだり、メーカーが決めた商品名が使われる傾向があるため、違和感を感じ難しくしているところです。
イタリアの場合は、格付けで上からDOCG、DOC、IGT(IGP)、Vinoの4つがあります。DOCGとDOCの合わせたDOPが新しい規格ですが、差別化が曖昧になるためDOPはほとんど使われていません。基本的にDOCGとDOCをおさえておけば間違いないのですが、DOCGだけで70種類以上、DOCにいたっては300種類以上あるので、ベテラン・ソムリエでも大変です。
イタリア・ワインが理解しにくい原因の別の要素は、そのあまり多いブドウの品種が関係します。イタリア政府が格付けの中で公認しているものは、何と400品種以上あるというから開いた口がふさがらないとはこの事か・・・
イタリア北部はフランス、スイスなどと接するアルプスの麓にあたり、特に良質なワインの宝庫と言えます。北西部(ヴァッレ・ダオスタ州、ピエモンテ州、リグーリア州、ロンバルディア州)のブドウは、赤がバレベーラ、ネッビオーロ、ドルチェット、ロッセーゼ。そして、白はモスカート・ビアンコ、コルテーゼ、アルネイス、ヴェルメンティーノです。特にネッビオーロは、イタリア最高の赤ワインを生み出していて、記憶しておくべき品種です。モスカートはいわゆるマスカット。
北東部(トレンティーノ・アルト・アディジェ州、ヴェネト州、フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州、エミリア・ロマーニャ州)の主力品種は、赤はランブルスコ、コルヴィナ、カベルネ・フラン、メルロー、ラボッソ、サンジョヴェーゼ。白はグレーラ、ピノ・グリージョ、ガルガーネガ、フリウラーノ、ヴェルドゥッツォなどです。ランブルスコ、グレーラは発泡性ワインになります。
イタリア中央部(トスカーナ州、ウンブリア州、マルケ州、ラツィオ州、アブルッツォ州、モリーゼ州)は、国としての心臓部であり、ラツィオには首都ローマ、魂の中心であるバチカンがあります。この地域では、主として赤にはサンジョベーゼ、モンテプルチャーノ、そして白にはトレッビアーノ、ヴェルディッキオ、ペコリーノが栽培され、量的にはメジャーな品種が中心になっていて、特にサンジョヴェーゼは、イタリア全土で最も多く栽培されている黒ブドウ品種。最もワイン作りが盛んで、良質の物が多く人気が高いのはトスカーナであることがポイントです。
そしてイタリア南部(カンパーニア州、バジリカータ州、プーリア州、カラブリア州、シチリア州、サルディーニャ州)は、ヴェスヴィオ山からの火山性土壌です。赤はアリアニコ、ピエディロッソ、ネグロアマーロ、ネーロ・ディ・トロイア、プリミティーヴォ、マルヴァジア・ネーラ、ガリアッポ、マリオッコ・ドルチェなどがあり、白はフィアーノ、ファランギーナ、ボンビーノが栽培されています。
離島になるシチリア島は、赤はネロ・ダーヴォラ、ネレッロ・マスカレーゼ、フラッパート、ネレッロ・カプッチョ、そして白はカタラット、グリッコ、カッリカンテなど。サルデーニャ島ではスペイン渡来の品種が多く栽培されており、赤はカンノナウ、ボヴァーレ、モニカ、ジロ、そして白はヴェルメンティーノ、ヌラグス、ナスコ、セミダーノがあります。
その道の達人によれば、ブドウの品種によってワインの味わいはまったく異なる・・・らしいのですが、実際作られるワインは一つの品種100%もあれば、いろいろなものをブレンドしたものもたくさんありますから、素人には簡単にはわからせてもらえない。
ここに列挙したものは一部でしかないのですが、何となく知っているとワインを探すときに少しだけ楽しくさせてくれることは間違いありません。焼酎でも、米なのか麦なのか、あるいは芋なのか他の物か、どこで採れたものを使っているのかとこだわりのポイントがたくさんあるのと同じこと。
ネットなどでいろいろと検索してみると、素人でも違いがわかるものがそれなりにありそうですから、そういうところから少しずつお気に入りの品種を見つけられれば楽しいということですね。そのためには、安い物でもまずはいろいろ飲んでみるしかないですね。