2013年3月30日土曜日

Zukerman / Mozart Violin Sonatas

どうも、最近クラシック音楽の話題が無いじゃないかと・・・まぁ、確かにそうなんですが、もともと好き勝手に書き綴っているブログですし、クラシック音楽は超マイナーなネタですから、無くて悲しむ方もいないでしょう。

何しろクラシック音楽というのは、限りある資源。現代作曲家が大好きで、今時のものばかりを追っかけていくならともかく、バッハだ、ベートーヴェンだ、シューベルトだと、クラシックの王道 - つまり、バロック ~ 古典 ~ ロマン期を中心に楽しむとなると、おのずと限界があるのです。

そりゃ、モーツァルトの何百曲をすべて網羅してとことんしゃぶりつくす・・・なんてことをすると、それだけで数年間は費やすことができるでしょうが、クラシックで生計を立てている演奏家や評論家じゃあるまいしね。

そもそも、モーツァルトがいかに天才だと言っても、名曲の数と同じくらいくだらん曲も残していたりしますし、名曲の中でも個人的な好き嫌いで的を絞っていくと、残った曲の数は簡単に数えることができる程度です。

そういうのを、今度は演奏家を変えて楽しむという・・・このあたりから、いわゆるマニア道がスタートするんですが、誰もが褒め称える名盤から始まり、歴史的音源とか、モダン楽器か古楽器か、あるいは驚異の新人登場などなど、楽しむ理由はいくつかあるもんです。

確かに、演奏者の数が少ないものほど同じ楽譜を使っているとは思えないくらい、聴いたときの印象が違ってきたりするのは、クラシック音楽の楽しみの最も大事なところかもしれません。グレン・グールドから始まった「ゴールドベルグ変奏曲」は20種類以上はそろえました。

この手の収集では、最大のボリュームになったのは、ベートーヴェンのピアノソナタ全32曲。どんなに少ないCDセットでも8枚組、その他のピアノ独奏曲やピアノ協奏曲なども含めた全集ともなると、その倍くらいの枚数になったりします。演奏家によっては、何度も録音していたりして、いやはや一体どんだけあるんだか。

ただし、ベートーヴェンの後にシューベルトのソナタにはまったもんで、今でもよく聴くのはどっちかというとシューベルト。いずれにしても、いくつか聴いていくと自分にとっての定番、というか基本になる演奏が見つかるものです。それと比較して、好きとか嫌いとかが決まっていくもの。

演奏家も新しい人がでてきたり、すでに有名になった人が満を持して「ついに登場」みたいな新しい録音もあったりするのですが、手に入るのは大多数はすでに演奏家も亡くなっているので、だんだん収集のペースはおちてくる。

となると、いよいよ、本来の楽器以外で演奏するとか、別の作曲家が改変したりとかの編曲物に手を出すのですが、これは脇道みたいなもので、入ってみるとすぐに行き止まりだったりするものです。結局は、また大通りに出てきて、次の脇道を探す・・・

そんなわけで、いよいよあちこち旧譜の中から探して楽しむことについては行き詰まった感があり、通販サイトの端から端まで見て回るというようなことがなくなりました。新譜の中でチェックしていると、これは聴きたいと思う物はそんなに多くはなく、数ヶ月に1枚(1セット)という感じ。

そんな中で、久しぶりにちょっと気になる新譜が出てきました。とは言っても、旧録音のセットなんですけど、ズッカーマンのモーツァルト - ヴァイオリン・ソナタ集です。1990年の録音で、これまでCD4枚組のセットで選集としてたびたび発売されてきたもの。

今回は、未発表だったものを加え全集としての新登場というところがミソ。ズッカーマンの演奏は、名だたる演奏家の中ではやや印象が薄い、つまり個性があまり出ない感じなのですが、逆に曲そのものをしっかりと聴きたいときにはちょうど良い。

有名曲だけでいいならムター(とはいってもCD4枚)、全部聴くならポッジャー(CD8枚)をすでに持っているのですが、感情入れすぎのムターと地味な古楽器のポッジャーという個性派コレクションですから、ズッカーマンは間をとってちょうどいいような気がします。

こういう曲集を聴いていると、天才モーツァルトの凡才な部分が炸裂していて、芸術家というより職業的作曲家としての真の姿が垣間見える・・・なんて言うと、世のモーツァルト・フリークに袋だたきに遭うかもしれません。

でも、実際のところ長くはない生涯で、さまざまなジャンルにわたって700曲以上の作曲を遺すということは、大多数は譜面を書き飛ばしていたはずで、ひとつひとつはそれほどたいした曲ではないはずです。天才の天才たる所以は、その中に1小節でも、はっと思うメロディをすべりこませたところなんでしょうかね。