関節リウマチの治療は、2003年に本邦で初めての生物学的製剤が登場してから、急進的な革新を続けてきました。
その後、この10年間の間に次々に製剤が開発され販売に至っています。登場順に、
インフリキシマブ (レミケード)
エタネルセプト (エンブレル)
アダリムマブ (ヒュミラ)
トシリズマブ (アクテムラ)
アバタセプト (オレンシア)
ゴリムマブ (シンポニー)
セントリズマブ (シムジア) 2013年3月発売
トシリズマブのターゲットはサイトカインの一つであるインターロイキン6、アバタセプトのターゲットは免疫細胞ですが、それら以外はすべてTNF-αと呼ばれるサイトカインです。サイトカインは、細胞から細胞へ情報伝達をする物質で、リウマチでの実行犯みたいなもの。
抗TNF-α製剤が多く、後発のものほど、いろいろとアレンジはされているものの、実質的な効果も副作用も大差はありません。医者としてもどれを患者さんにお勧めするか、特別の理由は見出せません。
使用方法が点滴なのか、皮下注射なのか、場合によっては自分で注射するのか、また週に2回、2週間に1回、月に1回、2ヶ月に1回というようなところで、患者さんのニーズに合わせて薬の選択を考えることが多くなります。
ターゲットがTNF-α以外のものは、最初から使用してもいいし、抗TNF-α製剤の効果がでない患者さんの場合の次の選択肢としても重要な意義があります。
つい先頃発売されたシムジアも含めて、薬の値段は通常の使用ではほぼ似たり寄ったり。どれを使用しても、3割負担の方で毎月4万円程度という高額な薬剤費が必要になります。
ただし、その対費用効果は大きく、通常の生活を送り、積極的な経済活動を送ることができる可能性を考えると、値段だけで治療をあきらめるのはもったいないかもしれません。
そして、つい先頃8種類目の新しい薬が製造販売承認されました。これは、JAK阻害薬のトファシチニブ (ゼルヤンツ) と呼ばれるもので、これまでにないものです。
これまでの生物学的製剤が、細胞外での作用であったのに対して、トファシチマブは細胞内での情報伝達(ヤヌスキナーゼ経路)をブロックするという機序を持っています。
作用機序の新しさは注目すべき点ですが、患者さんにとって最も気になるのは使い方でしょう。これまでのものがすべて注射でしたが、トファシチマブは経口製剤、つまり内服薬なのです。注射に比べて、使うときのハードルがさがります。価格については多少は下がるでしょぅが、内服薬としてはかなり高額になる事は避けられないでしょう。
副作用については、注射製剤よりも多いとの話がよく聞かれています。いずれにしても、5月には発売されると思われますが、内服だからといってすぐに飛びつく事は危険で、いろいろなデータが見えてくるまでは慎重な選択が必要です。
リウマチ患者さんにとっては、治療の選択肢が増える事は歓迎できる事で、ますます寛解(≒治癒)を目指して、病気を克服する方法が広がっていきます。それにつれてリウマチ診療をする医者の側も、より専門性が高まり、さらに勉強しないといけないわけですが・・・