1971年にブロードウェイで初演されたミュージカルの映画版。キリストの苦悩を描き、より人間として描いた事で評判になり、賛美両論を巻き起こしました。
また、全編を音楽、しかもロックで構成し台詞的なところがまったくないというのも斬新で、今ではミュージカルの神様的な存在の作曲家のアンドリュー・ロイド・ウェーバーを一躍有名にした作品です。
面白いのは、舞台よりも先にレコードセットが発売され、自分たち中学生もイアン・ギラン(Deep Purple)がキリスト役ということで注目させられました。
映画化にあたっても、舞台を強く意識した作りになっています。砂漠のようなところに、役者がやってきて舞台を作り出すところから始まります。衣装を着たりして、だんだんそれらしくなるにつけ、いつのまにか物語が始まるのです。
ユダは黒人のカール・アンダーソン、キリストはテッド・ニーリー、そしてマグダラノマリアは映画の後からクラプトンのバンドに参加し日本でも馴染みのあるイヴォンヌ・エリマン。
最後まで緻密に構成され、普通の台詞がなくても歌だけで緊張感を保っています。映画でないと観れない物なのに、舞台を観たような錯覚があり、不思議な感覚を残しています。
最近は、舞台をニューヨークにして、現代的な感性を取り込んだ形でのリバイバルのステージが話題になりました。これは「ジーザス・クライスト・スーパースター アリーナ・ツアー2012」として映像化されています。
以前のバージョンを知るものとしては、かなりシャープになり、動きも今時のダンスが取り入れられて、ずいぶんと違うものの印象です。モダンな箱の中に、楽曲は昔通りで、正直古臭さを感じてしまいました。曲そのものがメインの話ですから、あまり変えようがなかったのでしょぅか。全体には舞台映像なのですが、映画を見るような印象で、映画版とは反対の印象でした。
実は、映画版を観るよりも先に、自分の場合は舞台をみてしまったんです。これは、劇団四季が完全に日本語化したもので、キリストは売り出し中の若手だった鹿賀丈史、マリアは久野秀子、ユダは滝田栄でした。
ですから、日本語の歌詞が妙に耳にこびりついて、逆に映画の英語の歌には最初は違和感をおぼえたものです。
例えば始めのほうで、不安を感じる民衆がキリストに対して、''What's the buzz? Tell me what's happening''と繰り返すところは、日本語だと「何が起きるのですか、どうぞ教えてください」となります。
まぁ、名作ミュージカルですからいろいろなバージョンが生まれ続けるのは当然のことでしょう。これからも、違った形で続いていく作品なのだろうと思います。