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2013年3月9日土曜日

テルマエ・ロマエ (2012)

去年の邦画では、一番人気。いろいろな賞を受賞し、どうやら続編も作られることになった話題作です。

最近の映画・テレビは、たいてい原作がマンガということで、この作品も例にもれずです。それが悪いとは言いませんが、映像を作る側がマンガしか見ない世代が中心なのか、あるいはオリジナルのストーリーをくみ上げる力がないのか・・・

それはさておき、映画そのものは確かによくできている。評判になったように、「濃い」顔の俳優を選び抜いて、古代ローマ人として登場させても違和感がない。

ただ、ひねくれ者の自分としては、ちょっとだけ意義を唱えておきたい事があります。

主人公は、古代ローマの風呂作りの技師。ですから、彼が現代日本に何故かタイム・スリップして、そこから得たアイデアを持ち帰り古代ローマでヒットさせるというのが、ストーリーの主軸です。

ですから、映画そのものには、なんの問題もなく文句のつけようがない・・・のですが、宣伝でやたらと目立っていたのが、現代日本でのあわてぶりでした。

つまり、この映画を宣伝する映画会社の方針は、現代日本に何故かタイム・スリップしてきた古代ローマの風呂作りの技師が、そのカルチャー・ギャップであわてふためくところを楽しむコメディだというものだったわけです。

映画を作った人たち、監督とか俳優さんとかと、映画を売ろうとしている人たちの間には明らかな、作品に対する考え方の違いが存在していて、観ている側からすると何がしかの物足りなさが生じる部分がある。

初めて観るときの観客の期待は、もしも古代ローマ人が現代日本に登場したらどんなコメディが生まれるだろうかという興味に集中しているのですが、実際そういうシーンは前半の一部であって、いわゆる「つかみ」にすぎないのです。

108分間の映画の多くは、古代ローマにタイム・スリップした現代日本人が、その知識を生かして古代ローマで風呂作りに協力する話に使われています。それは、あまり笑いの要素は入り込みにくい、言ってみれば異世界に入り込んで、そこで精一杯生き抜いていくしかなくという悲壮感すら漂うわけです。

そういう意味で、よくできた映画だと思うわけです。もともとタイム・スリップという荒唐無稽なテーマですから、いろいろとご都合主義的な展開はありますが、時空を超えて風呂作りに一致団結する話としてよくまとまった内容でした。