今更言うまでも無く、うちのクリニックの看板は整形外科。大学病院で勤務していた頃は、「整形外科は全身管理ができない」とよく言われ、事実苦手にしていたことは否定できません。
言い訳をすると、そもそも全身管理を必要とする患者さんが少ないので、なかなかトレーニングされないというところが大きい。自分の頃は、医者になって最初の2年間は関連する科をローテーションして、整形外科では学べないスキルを身につけるシステムでした。
1年目の5月から勤務が始まり、最初の半年は整形外科、11月からは分院の整形外科、2月から放射線科を廻りました。2年目の5月からは外科、8月からまた整形外科に戻って、10月から麻酔科、そして最後に1月から救命センターでしたた。
あらためて見ると、整形外科だけでも半分の1年くらい。今から考えると、これを半分くらいにして、呼吸器とか循環器のような命にかかわる病気が多い内科をローテーションしたかった感じです。
さすがに、長年医者をやっていると、骨だけの事を考えているわけにはいかず、いろいろな内科的な合併症を持った患者さんなどに遭遇するために、最低限の他科の知識も積み上げられていくものです。
まあ、いまだに当直バイトやっていると、主として仕事内容は内科的な部分なので、多少は「一般医」的な部分を維持していくことに役に立っているだろうとは思います。
最近、ちょっと気分的にがっかりすることがありました。開院以来ずっと診させてもらっていた関節リウマチの患者さんで、もともと肺の合併症を持っている方がいます。これまで、しばしば肺の検査もしていたのですが、変な咳が出るという のでCT検査をしたところ、悪性腫瘍らしきものを発見しました。
そこで、大学病院呼吸器科に紹介受診してもらったのですが、待てど暮らせど結果の報告がない。患者さんに直接聞いても、高齢のせいか家族とばかり話をしていて自分には説明がないのでわからないという。
そうこうしているうちに、他の病院からこれまでの経過がわかるような紹介状が欲しいと連絡がありました。大学病院は、悪性腫瘍だけど治療はせず今後は在宅で管理するようにということで、別の病院に患者さんを紹介したということでした。
うちへの連絡も無く、通院は継続しているにもかかわらず、知らないところで話が進んでいたと言うわけで、うがった見方をすれば「整形外科だから呼吸器はどうせ診ないだろう」と考えられたということでしょうか。
もちろん、自分は呼吸器専門ではありませんし(だから大学に紹介するわけで)、在宅医療を行っているわけではないので、現状の患者さんのニーズに沿った医療を提供できないかもしれません。
でも、患者さんと作ってきた関係もありますので、ちょっとは先に話を知っておきたかった・・・という気持ちはどうしてもあります。まあ、所詮ボヤキということになりますけど、何にしても患者さんに不利益がないように、これからも少しでもかかわっていければと思うだけです。