ピアノは一台でソロと伴奏をしやすい楽器ですから、独奏曲は山ほどあります。
それに比べるとほとんどの管楽器や弦楽器は基本的には単音楽器の構造から、なかなか独奏というのはやりにくい。バイオリンはピアノに次いで、独奏楽器として人気がありますが、独奏曲となるとかなり限られてしまいます。
バッハの無伴奏ソナタとパルティータ全12曲は、ピアノの平均律クラヴィアとともに独奏曲としては聖書のようなものでしょうか。そして、イザイの無伴奏曲6曲も、しばしば取り上げられることがあります。
自分は、もちろんバイオリンは習ったことはないので、純粋に音楽の聞き手としてしか接することはあません。チェロの心休まる音色に比べて、バイオリンは高音が耳障りに思うことがあり、あまり好きではありませんでした。
正直言って、同じバッハの無伴奏ならチェロの方が圧倒的に好きです。ただし、天才パガニーニの24の奇想曲だけは違います。
これは、きっとバイオリン奏者を目指す人にとっては、たぶん最大の目標、最高到達点を示すものではないでしょうか。
バイオリンという楽器が持てる技術のすべてが詰まっているといわれ、確かにテクニックのためだけの部分もあるようには思いますが、全体を通して音楽的な完成度はもの凄いものがあります。
リストはここからいくつもの主題をかりて、大難曲練習曲を書き上げました。かつて五島みどりは17歳でレコーディングして話題になりました。その他、多くの名だたる奏者が録音を残しています。
さて、今回のチョイスはステファン・ミレンコヴィチです。パガニーニの他の無伴奏曲も含めた録音はこの人だけです。1977年旧ユーゴスラビア出身で、まだまだ若いバイオリン奏者で、録音もまだ多くはありません。
その少ない録音の中に、すでにバッハの無伴奏とパガニーニの無伴奏があるところは、かなりテクニック的にも自信があることをうかがわせます。
実は、誰の演奏を購入しようかいろいろ迷ったのですが、このミレンコヴィチ盤はもちろん聞いたことはありません。けっこう冒険してみたつもり。届くのが楽しみです。