現代の関節リウマチという病気の治療は、薬物療法が中心であることは間違いありません。特に21世紀になって、生物学的製剤の登場は革命的な変革をもたらしつつあります。
しかし、薬物療法ですべての患者さんで完全に病気を治せるわけではありません。薬の効果には個人差があり、中にはどんな薬にも抵抗性の患者さんもいるわけで、その結果関節部の骨の変形をきたしてしまえば、もはや薬で何とかするというわけにはいきません。
その場合は、手術療法や装具療法といった整形外科的な治療の適応が必要になるわけです。とは言っても、手術をすれば、元の健康な状態に戻れるわけではありません。
薬物療法の効果が期待できる関節リウマチそのものの痛みは、基本的には安静時痛です。つまり、じっとしていてもうずく痛み。それに対して、骨の変形からくる痛みは運動時痛。これは動かしたときの痛みです。
痛みのある関節が腫れはたいしたことが無く、動かしたときだけ痛みが出るようなら、いくら薬を代えたり増やしたりしても効果は期待できません。
多少極論すると、関節リウマチの治療は、血液検査結果に対して行う内科的療法とレントゲン検査に対して行う外科的療法のバランスの上に成り立っていると言えるかも知れません。
もちろん、最も重要なことは患者さんそのものです。病気の治療は、血液検査を良くする事でも、レントゲン写真を良くする事でもありません。患者さんの症状を注意深く見ていくことを抜きには意味がありません。
実際、血液検査が悪くても、まったく苦にしない患者さんがいます。どんなに変形していても、生活上不便に思っていない患者さんもいるのです。それぞれの患者さんの生活の中で求められる治療結果は、人それぞれであるということです。
もちろん絶対的な改善も重要ですが、そのために薬の副作用などを出しては元も子もありません。その患者さんにとって、最も安全で最大の効果を出せる治療を選択することが医者のプロのとしての仕事です。
病気の治療は、人に対して行われるものであって、血液検査の数字やレントゲンの見た目を良くする事ではないのです。