マッコイ・タイナーのキャリアは60年代から始まり、マイルスの元から独立したばかりのジョン・コルトレーンによって世に出ると共に、コルトレーンの急速な成長を支えた存在です。
基本的にはかなり手数の多いピアニストであり、バド・バウェル系でありながらコルトレーンからの影響は色濃く、 そのフレーズは他に類をみない斬新さがあります。
コルトレーンの強力なクァルテットを離れた後は、ブルーノート・レコードでソロ活動をはじめましたが、オリジナリティが発揮されはじめたのは70年代にマイルストーン・レコードに移ってから。
このアルバムは、マッコイとしてははじめてのストリングス・オーケストラとの競演。プロデューサーのオリーン・キープニュースの肝いりで、マッコイ・タイナーのアルバムとしては番外扱い。
通常のマッコイのアルバムとしては、あえて聴かなくても特に困らない異色の存在ではありますが、後にも先にものこれ一枚だけのまったくの別の作品としてものすごくインパクトがある。のびやかなストリングスに対して、たいへん切れのあるマッコイのピアノが対照的で絶妙のバランスです。
さらにこのサウンドを支えているのが、本当に一人で叩いているか信じられないくらい早業のビリー・コブハムのドラム。とにかくかっこいい。ヒューバート・ローズのフルートも、マッコイとビリーの音の洪水とゆるやかなストリングスの間で、適度なアクセントになっていて素晴らしい。
リアルタイムに1976年に初めて聴いたときは、とにかくぶっ飛びました。あまりのすごさに、結局マッコイにとってはこのサウンドは二度と作らなかったということでしょぅか。今から考えると、だからこそこのアルバムの価値が大きく膨らんだということでしょうか。