小さな勉強会をスタートに始まったフォーラムですが、丸2年だって今夜は第6回目。関節リウマチの実地医療を行って行く中で、自然発生してくる疑問をテーマにしてきましたが、今回は当初から是非一度は講演をしてもらいたいと考えていた内容。
関節リウマチは40歳台を中心に、女性により多く発生する病気です。当然、生殖年齢が含まれるわけで、しばしば病気療養中の妊娠・出産が問題になる。
そこで、この手の話の日本の第一人者である、国立成育医療研究センターの村島温子先生をお招きしました。学会の講演でも人気が高く、いつでも立ち見がでるほどなんですが、このような小さな会に来ていただけるというだけでも値千金です。
関節リウマチに限らず、病気中の妊娠の問題は、
① 病気が妊娠をしにくくしていないか
② 薬の治療が胎児に影響しないか
③ 治療経過が妊婦に影響しないか
④ 薬の母乳から胎児への影響はどうか
などが大きな疑問点。
関節リウマチ治療では、実際多くの副作用を伴う可能性がある薬を使用していくので、妊娠と関係がなくとも体への影響をたえず注意している必要があります。
関節リウマチのコントロールが不良の状態は明らかに妊娠しにくく、しっかりとコントロールされている方が妊娠しやすい。特に大量の痛み止めを使用していると、妊娠に対して大変不利であることは事実として認識されています。
薬の副作用を心配して、妊娠を希望する患者さんに対しては治療を中断してから一定期間をおいて妊娠を許可するという考え方があり、自分も漠然とそういう話し方をしていたと思います。
しかし、目からうろこみたいなところですが、コントロールがまだついていない状態で治療を中断すると、病気の勢いが増して妊娠もしにくくなり、また母体も体調がどんどん悪くなるだけで、結局希望する結果を得られる可能性を低くするわけですね。
ですから、治療を中断するのは母体・胎児の安全を考慮してという理由をつけますが、実は医者自らの安全あるいは安心のための選択かもしれない。自分の行った医療行為の結果を、少しでも悪くしたくないという気持ちの表れが含まれている。
さらに、患者さんが男性の場合は、理論的には薬そのものの影響はほぼ無いということも目からうろこPART 2 でした。挙児希望の場合には、男性側の薬の影響は妊娠するかしないかに関与することはあっても、奇形などの問題を起こすことはないということはないのです。
一番の問題は、もちろん薬の使用をどうするかということです。薬の催奇形性 - つまり、奇形児を作ってしまう可能性は、動物実験によりある程度判断されていますが、ほとんどのリウマチ薬は当然妊婦に対しては禁忌となっている。
ただ、ここで重要なことは、病気がなくても自然流産の確立は15%、奇形の発生率も3%あるということです。薬を使っていた場合は、何か起こると100%の気持ちで薬のせいと考えがちです。また、薬さえ使わなければ100%問題なく出産できると思い込みやすい。
昨日の講演では、各論としていろいろな薬の影響について説明を聞きましたが、患者さんのしっかりとした理解が得られるならば、十分に注意して治療を継続して行く可能性があることを示していただけました。
具体的な内容をここに書くことは控えますが、リウマチの患者さんが少しでも安心して妊娠し出産できるように自分たちもしっかりと知識を整理しておかないといけないわけです。
生育医療センターでは、妊娠した方を登録していろいろな問題点に対するアドバイスと調査を行っています。これは、現在妊娠した方が安心して出産できるためのお手伝いであると同時に、将来妊娠するかもしれない方への更なる有益な情報提供に役に立ちます。
自分たちも、そのような場合には積極的に連絡をとるようにしたいと思いますし、患者さんからも積極的にまずは電話をしてみることをお勧めいたします。
国立生育医療研究センター
妊娠と薬情報センター
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