SPはフジテレビの深夜ドラマからスタートし、放送時間帯としては驚異的な視聴率をマーク。おそらくもともとの計画として、映画化を視野に入れられていたようで、いろいろな伏線が張り巡らされていました。
こういうドラマがヒット→映画化というメディア戦略は、最近では当たり前のようになって珍しくありませんが、ここまで惜しみなくネタを搾り出す作品は他にはありません。
SPは要人警護を専門とする警察官をテーマにしていますから、普通なら警護の難しさ、あるいはテロに襲われた場合に身を挺して要人をガードする職責の重さなどに焦点が当てられるのが普通。
ドラマ版では、そういう観点からは4つのエピソードが含まれ、SPの「かっこよさ」と「苦悩」が描かれています。しかし、登場人物たちの知らないところで、それぞれの事件が実は有機的なつながりがあり、見ている側は何が起こるかわからない緊張感が高まって行きます。
全11話のテレビドラマ版を壮大なプロローグとして、ついに「野望篇」と「革命篇」で本当のテーマに向かって怒涛のエピソードが爆発していく感じです。
真のテーマを進めていくためには、主人公がSPである必然性があるわけですが、劇場版ではSPという仕事そのものよりも、巨大な権力により踏みにじられた2つの家族の話が中心にあります。
それぞれの生き残った家族は、別々の方法で真実を追究していく。もちろん、所詮映画ですから、そんなことできないだろう的な大きな話の展開になっていくわけですけど、その嘘っぽさを感じさせないリアルさがドラマ版から積み上げられているのです。
昨年公開の完結篇とされる「革命篇」は、まさに大震災の日が公開だったので、フジテレビとしても大々的な宣伝ができず、さぞかし苦戦したことでしょぅか、実際の興行はそれなりの結果をのこしました。
しかし、話の終盤、いくつかの謎が解明されましたが、エピソードの裏側に隠れた部分がまだまだあることを匂わせて終わっています。「復讐篇」とか「再生篇」といったタイトルの、真の最終章が用意されているような気がします。