2012年10月16日火曜日

医学論文

最近話題の集まっているのが、iPS細胞の人への臨床応用・・・実はウソでした、という話。

なにしろ、これほどのウソを流すほうも流すほうですが、それをしっかり一面トップで報じた新聞社もそうとうガッカリものです。そういうメディアの愚かさを言い訳するかのように、取材はやたらとヒートアップしているような気がします。

こういう目的のはっきりしない、なんか虚言癖がありそうな人物のすることですから、できるだけ相手にしないのが一番のように思います。

ただ、少なくとも医者の端くれとしては、このことによって医学の価値が下がるようなことがあれば、そのことのほうに憤りを感じるのです。本当にまじめに研究をしている人は、世界中に大勢いるわけで、そういう人たちに土下座をしてもらいたい。

医学の世界では、論文として認められるのは、きちんとした学会誌・商業誌に載って出版されたものだけというのは常識。口だけでいったもの、それがたとえ学会での口演発表であっても、しゃべっただけではだめ。

何故かと言うと、学会で発表という時点では、一定の審査はありますが、細かい内容をチェックされるものではないのてす。それに対して、学術誌に投稿する場合は、査読というシステムがあり、内容の厳しいチェックが入ります。

少しでもあやふやな表現や、疑問が残るところについては、何度も質問が帰ってきて、書き直しを要求されます。その辺が厳しいものほど、学術誌としての権威が高くなります。その指標となるものがインパクト・ファクターと呼ばれていて、これが高いほど学術誌としても認められ、論文が載ることは著者の名誉となるのです。

自分も、ちょっとだけ論文を書いていますが、英語論文がひとつだけあります。このときは、必死に英作文をしましたが、確か5回くらい駄目だしで戻ってきて、いやもう大変でした。そのかわり、印刷された論文が手元に届いたときは素直に嬉しかったです。

とりあえず、今回の騒動の主は少なくとも医師ではないようですが、いずれにしても世界中の医学に携わるものを敵に回したことは間違いないでしょう。