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2012年11月19日月曜日

L.Visconti / Conversation Piece (1974)

「地獄に堕ちた勇者ども」、「ベニスに死す」とくれば、当然次はゲルマン三部作として有名な「ルードヴィヒ」としたいところですが、実はこれを劇場で見たことが無い。

「ルードヴィヒ」は80年代になってビデオで見たのが最初。しかも完全版で4時間の大作でした。作品としてはもちろん悪いはずがないのですが、自分としては映画館で見た鮮烈な印象が強い「家族の肖像」をヴィスコンティ作品のベストにあげたい。

まずキャスティングの魅力。ヴィスコンティお気に入りの新旧の男優、バート・ランカスターとヘルムート・バーガーが共演しているところがいい。

ランカスターはつまらない西部劇俳優で、あとは「泳ぐ人」、「大空港」でくらいしか思い出さないのですが、ヴィスコンティの「山猫」とこの「家族の肖像」の2本で、映画史に刻まれる俳優となったといったら言い過ぎでしょうか。

バーガーは「地獄に・・・」で鮮烈な女装で衝撃のデヴューをし、ヴィスコンティとは特別な関係があったことは有名で、監督亡き後は未亡人を公然と名乗っていました。

ヴィスコンティの映画としては珍しく、室内のシーンがほとんどで、どちらかというと舞台劇のような・・・つまり、ヴィスコンティにすれば昔取った杵柄のような得意とするステージで話が進んでいきます。

豪華絢爛たるシーンはなく、地味なヴィスコンティの作品の中でも、さらに地味な設定となっていますが、かえってそこに強烈なリアリズムが込められている。

老教授は、身よりもなく家族の様子を描いた古い絵画の収集を唯一の楽しみにしています。そこへ強引に間借りすることになった現代の若者たちが、教授の平穏な毎日に割り込んでくる。はじめは疎ましく感じていた教授は、しだいに「家族」ができたと思うようになりますが、悲劇によって終止符をうたれ、教授も病により息を引き取る。

何も救いがあるわけでもない話ですが、家族という物がどれほどもろい物かを語っているのか、それともだからこそ家族の大切さを語っているのか。それは、見る人の判断なのでしょう。

「ベニスに死す」でのマーラーのアダージオのように、最後の教授の死の床のシーンに流れるのはワーグナーの未発表だったピアノ曲です。この寂寥感が素晴らしくマッチしていて、見終わった後の余韻をながく残す要因となっています。