2015年2月14日土曜日

リウマチ手指の腱断裂

関節リウマチの合併症として、腱断裂というのがよくあります。腱というのは、筋肉の先の紐状になった部分で、鶏のささみの端っこについているのが腱です。

ほとんどは、手指を伸ばす、つまり手の甲側にそらすための筋肉の腱が切れることが多い。この場合、手首のリウマチによる腫れが親指側中心に長くおこっていた方は、母指伸筋腱断裂を起こしやすく、小指側中心の腫れが長い方は、小指から順番に薬指、中指、まれに人差し指が切れていきます。

また、指を曲げる側の屈筋腱が切れることも珍しくはありません。比較的、親指に起こりやすいのですが、屈筋腱の場合は手首の手のひら側での腫れがきっかけになっています。

治療の進歩によって、リウマチの腫れ、つまり滑膜炎という状態がかなりコントロールできるようになったので、腱断裂の発生頻度はずいぶんと減ったと思います。しかし、ある程度の骨の変形や腫れが出ている人には、それなりの確率で発生する可能性は残っています。

炎症が強い場合には、腱にも波及して、少しずつ細くなっていくような切れ方をするので、だんだん動かしにくくなります。骨の変形が強いばあいには、それに接する腱が動かしているうちにすり切れてしまい、ある日突然指が動かないようになります。

いずれにしても、一定範囲の腱が傷んでいて、切れたからといって、そのまま切れ端同士を縫い合わせるわけにはいかないので、大至急手術をしないといけないというものではありません。あわてる必要はありませんので、切れたかなと思ったら、次の通院の時に主治医に話をしてもらえば、普通は何も問題はありません。

人間の手というのは、なかなかよくできていて、ちょっと問題があっても代替機能がいろいろあったりして、意外に不便がないこともよくあったりします。腱が切れたことで不便があるかどうかは、人によっても違います。ですから、不便かどうか、慣れてきて使い勝手が問題がなくなるかどうか、まずは数か月様子を見てからでも遅くはありません。

さて、やっぱり困るということであれば、いよいよ手術を考えないといけないのですが、リウマチに多い膝や股関節の人工関節の手術は、道具もよくなって、どこで誰に手術をしてもらっても、それほど問題はありません。しかし、腱の手術は、手の手術に慣れている人で、リウマチの扱いに慣れている医者を選んでほしいと思います。

切れ方はいろいろで、指に向かう腱の状態も人によってけっこうバリエーションがあります。このあたりは、皮膚を切って、中を見ないとわかりません。その場での判断が重要になり、適切な再建方法を臨機応変に選択する必要があります。また。腱を縫合する力も、一定の基準はなかなかないので、術者の経験に頼らざるをえない。

このあたりは、どうしても誰でも同じように手術ができるというものではないところ。リウマチを専門に扱っている病院で、手の外科というジャンルを担当する医師がいる病院にお願いするのが無難です。実際、なかなかそういう病院が少ないので、結局今でも年に数人の手術を自分でしているということになってしまいます。