GMに代表されるアメリカの自動車というと、60年代のイメージとともに、やたらとでかくてガソリンを底なし沼のように消費するという感じが付きまといます。
しかし、地球温暖化問題でCO2排出削減が緊急課題ともなると、世界的にEcologyが重視され、従来のアメリカ車のような車は受け入れにくくなったのは事実です。
その中で、最近までまったく知らなかったのですが、2003年に新しい自動車会社がアメリカに誕生していました。テスラ・モータースという会社で、何とシリコン・バレーを拠点にしている。
主導するのはイーロン・マスクという南アフリカ出身のひと。テスラを起業したとき、まだ32歳。同じ頃に、民間スペースシャトルのスペースX社も作っており、人類を火星に移住させると豪語している。
シリコン・バレーといえば、かつてはパソコンなどの半導体産業の中心地。つまりテスラは、電子部品関連に強みを発揮するベンチャー企業という立ち位置にあって、従来の自動車メーカーとは一線を画すんですね。
2008年に発表された、最初の量産車はテスラ・ロードスターで、なんと完全電気自動車。走行距離は356km、0-100km/h加速が4秒未満、最高速度201km/hとされ、価格は1000万にもかかわらず、1000台程度が売れたようです。
その後セダンのモデルSと、SUV的なモデルXが発表され、現在は日本法人も作られて、モデルSが購入可能になっています。ただし、これも価格は900万円。さすがに、実用的に走れる電気自動車ともなると、安くはなりません。
電気自動車として、面白いのは常時ネットに接続していて、メンテナンスはリモートで行われるところ。つまりスマホのアプリが、ちょこちょこと自動でアップデートされているのと同じ感覚です。
自動車というと、重機械という感覚ですが、テスラは電子機器の一つとして自動車をとらえているのかもしれません。写真からは、なにしろドアハンドルが見えないので、ドアの開閉から電子的に行われるのでしょうね。
トヨタは以前に提携を発表していますが、どうもトヨタが進めようとしている燃料電池車の方向性とは離れて行っているようです。パナソニックは自動車用電池の供給先として、テスラとの提携を行う事にしましたが、大得意先のトヨタとの関係が難しそう。
テスラは電気自動車関連の特許を無償公開して驚かせましたが、これもすべて電気自動車を推進して、自社の優位性を確立するため。ところが、最近トヨタが燃料電池車の特許を同じように無償公開したことで、テスラは怒り心頭のようです。
このあたりは業界の雄は誰かという、一種の覇権争いみたいなものも絡んでいるのでしょう。未来の自動車のあり方は、現実的な実用性だけで決まるわけではなさそうです。