一人ならソロ(solo)、二人ならデュオ(duo)。ジャズでは、単音楽器だけでソロというのはなかなか難しい。ソロはたいていピアノかギター。デュオでは、けっこう自由になりますが、単音楽器と伴奏に向くピアノ、あるいは低音を出せるベースとの組み合わせが多くなります。
ピアノ・ソロで異彩を放ったのはキース・ジャレットで、ライブで1時間近くのその場で思いつくまま即興でソロを演奏することばかりしていた時期があります。ジョー・パスとハーブ・エリスのギター2本のデュオも珍しかった。
ただし、ジャズの特徴でもある「のり」が薄まってしまうので、下手な人がやると、単なるバーのBGMのようなカクテル・ミュージック化してしまうものも多い。
それ以上の人数では、ポピュラー音楽ではバンドですが、ジャズではグループとしてコンボ(combo)という言葉が使われます。
3人ならトリオ(trio)で、メインの楽器とベースとドラムと言うのが多い。一般的には中心となる楽器の合わせて併記することが多く、よく使われるのはビアノ・トリオ。中にはソニー・ロリンズのテナーサックスとベースとドラムとか、オスカー・ピーターソンのピアノとギターとベースという攻めた編成もあります。
4人ならクアルテット(quartet)、5人ならクインテット(quintet)で、ピアノ・トリオに管楽器が1本、または2本加わったものがほとんどで、一番多い形かもしれません。さらに管楽器が増えて、6人ならセクステット(sextet))、7人だとセプテット(septet)。
さすがに、これ以上になってくると各自が勝手にブヒブヒと音を出すと訳がわからなくなりますから、キチンとした編曲があって、合奏することが重視されビッグ・バンド(big band)と呼ぶようになります。きっちりとした使い分けは無いのですが、ある程度以上の人数だとオーケストラ(orchestra)です。
花形の楽器は、クラシックではほとんど使われないサックスでしょうか。音域の高い順にソプラノ、アルト、テナー、バリトンの4種類が登場します。チャーリー・パーカー以来のアルト・サックス、そしてソニー・ロリンズやジョン・コルトレーンに代表されるテナー・サックスが主力ですが、ソプラノはコルトレーン、バリトンはジェリー・マリガンの一択と言えそうです。
トランペットは何と言ってもマイルス・デイビスが巨人すぎて、あとが霞んでしまいます。マイルス以前だとディジー・ガレスピー、以後だとフレディ・ハーバート、ウィントン・マルサリスなどが思い浮かびます。
トロンボーンは、J・J・ジョンソン、カーティス・フラーですが、あとはビッグ・バンドの中に埋もれてしまった感があります。
木管楽器だと、ほとんどクラリネットくらいしか登場しません、特にスイングの時期に活躍し、ベニー・グッドマンが有名。ウディ・ハーマン、バディ・デフランコと続き、パップの時期まではリーダーとして活躍しました。もっとも、異色なものとしてベニー・モウピンのバス・クラリネットというのもありましたけれど。
昔、しばしばあったのがジャズ・コンボにストリングスが加わった演奏で、これはたいていレコード会社が「売れる」ために企画したものが多く、ジャズのファンからはやや敬遠されています。
ただし、バイオリンだけは、ステファン・グラッペリに代表され、ソロ楽器として一定の役割を果たしました。現代でも、日本人の寺井尚子は第一線で活躍しています。変わったところでは、トゥース・シールマンのハーモニカ、ミルト・ジャクソンやゲーリー・バートンのヴィブラフォンなどが思い出されます。
70年代以降、ジャズもロック化して、ギター、キーボード、ベース、ドラムという編成が中心になり、管楽器・木管楽器は活躍の場が限られていきます。