現在は、日本人の寺井尚子の活躍が目を引きますが、そもそもジャズ・バイオリンの知名度を上げた第一人者と言えばフランス人のステファン・グラッペリです。
ジプシー・ギターで戦前を中心にパリで人気を博したジャンゴ・ラインハルトのパートナーとして有名ですが、いかにも昔のフランス映画にもいかにも合いそうな哀愁の漂う演奏は素晴らしい。
でも、アップテンポの曲では、猛烈にスイングする演奏も魅力的で、自然とノリノリになれるので、小難しいことは抜きにして音楽を楽しみたい向きには最適かもしれません。
歴史的にはジャンゴとの共演を聴くべきところなんですが、さすがに古くて音も良くないので、積極的にはお勧めしにくい。
クラシック音楽の世界からメニューインを引き込んでの共演盤もあり、好きに弾くメニューインの普段聴けない魅力もあってなかなかあなどれません。
まとめて、フランスでの録音アルバムをまとめた「JAZZ IN PARIS」シリーズをボックス化したものが、どれをとっても楽しめる。
その中で、あえて一枚ということになると、オスカー・ピーターソンとの共演盤を推薦したいと思います。そもそもピーターソンのピアノが、スイング感に溢れているので、グラッベリのバイオリンもイケイケで楽しいなんてもんじゃない。
Vol.1とVol.2の2枚がありますが、どっちということではなく、まとめて楽しみたいところ。特に10分近い「My One and Only Love」は、ジャズ・バイオリンのバラード演奏の教科書みたいな演奏。定番の「枯葉(Autumn Leaves)」では、まるでフランス語で歌っているかのように聞こえるから不思議です。
ニューヨークとパリの文化の違いと言うと大袈裟ですが、不健康な薬とタバコの煙ではなく、ワインと花束のような雰囲気が漂う音楽は悪くないものです。