あー、この人も、やっぱりアンダーグラウンド感満載。本当にこの時代、このジャズの世界では、クスリと酒は切っても切れない関係があって、才能を開花させる源泉となったのか、あるいは潰す元凶となったのか、紙一重みたいなところです。
一般には、テレビCMで使われた「クレオパトラの夢」は最も知られたオリジナル曲ですし、50年代前半の一連Blue Noteレーベルへの録音が、溌剌とした演奏を聴くことができます。
その後、Verveレコードに移籍してからは、企画物が多くなりしだいに精彩を欠くようになりました。パーカーなども同じですが、Verveはジャズを一般に広めた功績とともに、売り上げを狙った企画をミュージシャンに強要した功罪は確かにありますね。
60年代に入って、よれよれでまともにピアノが弾けない状態の事もよくあって、急速にパウエルの人気は落ちていきます。フランスに渡り、一時人気を回復しますが、1966年に結核、栄養失調、アルコール中毒で亡くなりました。
このアルバムを代表作とするのは異論も多いかもしれません。初期のバリバリの演奏からするとだいぶおとなしい演奏ではあり、精細さに欠けると言われればそれまでですが、ここにはパリに渡りおそらく精神的に解放され本当に音楽を楽しんでいる姿が記録されています。
また選曲も、よく知られたスタンダード曲が多く、パウエルも気楽に演奏できたのが良い結果につながったのでないかと思います。枯れた味わいという表現もありますが、つかの間の精神的な安息を得た姿が記録されているように思います。