2020年6月16日火曜日

Billie Holiday / Strange Fruit ('30~'40)

ジャズの中では、ボーカルというのも忘れてはいけないジャンル。

当然、人の声というのは楽器の原点であり、かつ究極の楽器ということもできる。

ルイ・アームストロングのしゃがれた味のある歌声も捨てがたいのですが、やはりジャズ・ボーカルは女性の方が華があって楽しい。多くの有名歌手がいる中で、孤高の領域を最初に極めたのがビリー・ホリデイ。

ジャズがアンダーグラウンドであったことを象徴するかのように、その人生はまさに波乱万丈で、アルコールに浸り、薬物に溺れ、そして何度も逮捕され、44歳で亡くなりました。

チャーリー・パーカーらと同じく、その破滅的な人生とともに伝説になったことも含めて、ジャズ・ボーカルの巨人として、いまだに根強いファンがいますし、一度は耳にせずにはジャズは語れない存在です。

今は、安価な廉価版ボックスが多数ありますので、どれでも構いません。どれか一つ、手に入れれば簡単に代表的な歌唱を聴くことができます。

あえて代表的なアルバムを選ぶとなると、彼女の継続的なレパートリーであった「奇妙な果実(Strange Fruits)」をタイトルに冠したアルバムは外せません。

実は、奇妙な果実とはリンチで木に吊るされた黒人を意味しており、人種差別により迫害される黒人としてのビリーの強い思いが込められている。現代アメリカにおいても継続している問題をテーマにしています。

さらにもう一つというなら、「レディ・イン・サテン(Lady in Satin)」も選びたい。けして美声とはいえませんが、歌に込めた黒人としての思いが聴く者の心を揺さぶります。