2020年6月21日日曜日

Sonny Rollins / Saxophone Colossus (1956)

マイルスが頑張っても、ジャズの世界で花形の一番手はサックス。特にテナー・サックスは、数々の名演奏家がいます。

古くはレスター・ヤング、ベン・ウェブスターなどが思い出されますが、モダン・ジャズと呼ばれるチャーリー・パーカー以後、最大の巨人に並び称されるのはジョン・コルトレーンとソニー・ロリンズ。

ソニー・ロリンズもまた薬物中毒との戦いで、表舞台に出たり消えたりを繰り返した人で、アンダーグラウンド感は半端ない。俗世間から逃避して、毎日橋の上で一人でサックスを吹き鳴らしていたなどの逸話もたくさんあったりします。

基本的にバリバリと吹きまくるタイプで、以前のムード・テナーのような音は出さない。ただし、一定の音楽的な枠を逸脱することは無く、そういう意味ではどの時代の録音でも聴きやすい。

ロリンズの代表作を1枚だけ選べと言われたら、「サキソフォン・コロッサス」で、たぶんほぼ全員の意見が一致する。ジャズ史に残るワン・テナー・クァルテットの名盤の一つとしても、間違いなく否を唱える人はいません。

ソニー・ロリンズのあか抜けないテナーに対して、トミー・フラナガンの品のある節度を保ったピアノの伴奏、そしてマックス・ローチも日頃の攻撃的なドラミングを抑え気味にして、ロリンズを前面に出している感じ。

この日のセッションでは、ジャズでは恒例となっているアウト・テイクはいまだに見つかっていないようで、彼らの一発にかける集中力もかなり高かったと思われます。かと言って、ふだんのライブ・ハウスのような、コード進行決めて、後は好きなだけ吹くというものではありません。

最初の「セント・トーマス」は、考え抜かれたローチのドラムからスタート。何が始まるのかと思っていると、比較的陽気なカリプソ風のテーマが登場し盛り上がっていきます。続いて、「恋とは何かあなたは知らない」では、いきなりサックスのムーディな出たしが印象的。全5曲40分の並べ方が絶妙です。

青いバックに、テナーを吹くロリンズの真っ黒な影絵の2色だけというジャケットが印象的。ただ、最近発売されているものは、影絵のコントラストを調整して、何となく顔がわかるんですが、これが妙に気持ち悪いのでやめてもらいたい。