2021年3月7日日曜日

天才マックスの世界 (1999)

ウェス・アンダーソン監督の2作目の劇場用映画。

15才のマックス・フィッシャーは自分の興味があることに対しては、天才的な能力を発揮します。有名校であるラシュモア高校の中で、ものすごく多くの部活に時間を費やす結果、興味のない多くの科目の成績はふるわない。そのため退学させられる危機にあるのです。

乱暴者のブルーム兄弟の父親ハーマンとマックスは仲良くなり、不思議な友人関係。そんなマックスは、ある日、美人のコリン先生に一目惚れ。ハーマンは、最初はマックスとコリン先生の間を取り持っていましたが、次第に自分がコリン先生を好きになってしまう。

それを知ったマックスはハーマンの奥さんに告げ口。ハーマンは離婚され、コリン先生とも別れることになります。しかし、いろいろな誤解から始まったこの騒動でしたが、マックスは好きな演劇ですべてを出し切って、少し大人に成長したのです。

驚くべきは、2作目にして、早くもアンダーソンらしさがたくさん出ていて、すでにスタイルを確立しているところ。ストーリーだけ見るとロマンチック青春学園物という感じですが、主人公がかなりの変人で、ちょっと一癖ある周囲の人々と共に、「普通」と思われることとのギャップが生み出すコメディで、まさにアンダーソン節全開です。

アンダーソンの作品には同じ俳優が出演することが多いことも知られていますが、前作で主役を務めたルーク・ウィルソンがちょい役で登場しているのをはじめ、このあと多くの作品で活躍することになるマックス役のジェイソン・シュワルツマンとハーマン訳のビル・マーレイが初登場です。

シュワルツマンはこの映画が俳優デヴュー作で、この時19歳でした。マーレーはすでに「ゴーストバスターズ(1984)」などで有名な人気喜劇俳優でしたが、賞レースとは無縁。ところが、この映画でいろいろなところから初めての助演男優賞を受賞しています。また、前作に続きクマール・パラーナがちょっとしたアクセントになる端役でみられるのもうれしいところ。

映像としても、真上からのショットや急にスローモーションになったりするのは、いかにもアンダーソン的です。派手なカラフルな色彩使いはまだあまり見られませんが、一部では左右対称性を重視した画面構成もあり、ほとんどの作品でチームを組む撮影のロバート・D・イェーマンとのコンビネーションが出来上がっています。

監督の個性がしっかりで出すと、映画はやはり急に面白くなってくる。精一杯背伸びをして大人の女性に恋をして、大人のおっさんと友人になって、同世代からは絶交されても、天才はなんとかうまりけりをつけていくところが嫌味にならず描かれた秀作だと思います。