時は流れ、現代の吸血鬼・・・ヴァンパイアは、超モダンなアクション映画になっていました。
この映画は、1000年にも及ぶ吸血鬼、ヴァンパイア族と狼男、ライカン族の戦いというかなりぶっ飛んだ舞台に繰り広げられる話。主役はケイト・ベッキンセイルが演じる、ヴァンパイア族の処刑人セリーンで、彼女の独白で、ごく簡単に状況が説明されるのですが、初めて見ると簡単には頭に入ってきません。
あらためて、最低限おさえるべき基本的な世界観の設定は、1000年以上昔にアレクサンデル・コルヴィナスがウイルスの感染により不老不死となり、3人の息子のうち一人は蝙蝠に噛まれヴァンパイアに、一人は狼に噛まれライカンとなったということです。
彼らの子孫は、ライカンがヴァンパイアに隷属する形で繁栄しましたたが、ヴァンパイアの長であるビクターの娘ソーニャは、掟を破りライカンのリーダーであるルシアンと愛し合い身籠りました。純粋な血族性を重んじるビクターはソーニャを処刑し、ルシアンは復讐のため両族間の戦争に発展しました。
その後、ビクターの部下であるクレイヴンによりルシアンは倒され、ライカンは世界中に四散したということ。それから600年、ほぼヴァンパイア族は勝利を目前としていますが、世界中に四散したライカンを発見して処刑するのがセリーンの役目。
セリーンは家族をライカンに惨殺され、ビクターによって救われました。ビクターはソーニャに似ているセリーンを噛みヴァンパイア族に導き入れ、セリーンもビクターに絶大な信頼を寄せ処刑人を続けていたのです。
ヴァンパイア族は、ビクター、アメリア、マーカスの三人の長老がいて、一世紀ごとに順番に族を支配していますが、支配から外れると200年間眠りにつくというシステム。アメリアが眠りにつき、マーカスが復活する儀式が目前に控えていました。
今では、かれらもデジタル機器を利用し、両手に小型自動小銃を持って戦います。ヴァンパイアの使う銃弾は銀でできていて(狼男の弱点)、ライカンの銃弾は紫外線を放出する曳光弾(吸血鬼は日光に当たると死ぬ)です。
設定が理解できなくても映画は始まり、高い塔の上でセリーンは、仲間とライカンを補足するシーンからスタートします。ロングコートと黒で固めたヴィジュアルからしてスタイリッシュでカッコいい。塔からバットマンさながらに飛び降りて、すくっと立ち上がって歩き出すところはゾクゾクします。
すぐに地下鉄駅構内での銃撃戦となり、もはやアクション映画は男性が演じるだけのものではないということが、ビシバシと伝わってきます。初めのうちは、どっちがヴァンパイアでどっちがライカンがよくわかりにくいのですが、とにかく何かすごい雰囲気が十分に伝わってくる。
セリーンは、ライカンが人間のマイケルを捕えようとしていることに気がつきます。実は、マイケルはコルヴィナスの末裔で、ライカンはその遺伝子と融合することで大きな力を得られると考えたのです。その作戦のリーダーは・・・何と、死んだとされていたルシアンでした。
クレイヴンは、族の支配と和平と引き換えにルシアンを逃がしていたのです。不穏を察知したセリーンは、権限を越えてまだ復活の順番ではないビクターを目覚めさせますが、すでにルシアンの作戦は始まっており、アメリアは襲撃され死亡し、マイケルも奪われてしまいました。
映画は全編にわたり青味を基調として暗い画面で統一され、一見するとゴシック・ホラーという感じなんですが、恐怖映画としての要素はほとんどありません。古くからの因縁をベースにした近代アクション物、しかも主人公が女性というところがポイント。ただし色っぽいところはほぼありませんのであしからず。
また、さすがに狼男にはCGが多用されていますが、アクションはワイヤー・アクションを中心にスタントが中心というところは良いと思います。CGばかりだと何でもありになってしまい、だったらアニメでいいという感じになってしまう。
普通ならその他大勢のB級映画的な内容なんですが、この独特な世界観からカルト映画的な要素があるので、入り込めればそれなりに楽しめます。ただ、どうしても主役のセリーンに気持ちを持っていかれるので、ライカンは悪役。ところが、ライカンを悲劇に追い込んだのはヴァンパイアであり、やってることはえげつない。
結局、最後もヴァンパイア対ライカンというより、ヴァンパイア内紛状態になっていくので、基本的な設定が生かされていない感じもします。少なくとも、ケイト・ベッキンセイルのカッコよさだけでも見所は十分ですけど。
映画は、尋問し殺したライカンの血液が眠っているマーカスのもとに流れ込み、ライカンとの融合により強大化するはずのマーカスが復活しそうになるところで終わります。続きはシリーズ第2作で。