2021年10月12日火曜日

ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う! (2013)

スリー・フレーバー・コルネット3部作と呼ばれる、監督エドガー・ライト、脚本サイモン・ペグ、主演サイモン・ペッグ、ニック・フロストらのチームによるコメディ映画の一つ。完結編にあたる本作はストーリーはまったく繫がりはりませんが、思春期から成長した個人の人間関係を描くという共通のテーマを持っています。


この作品では、SF映画の形態をとっていますが、時代は現代の地球であり、進歩した科学的なギミックなどはまったく登場しません。エイリアンによる密かな地球侵略というのは古典的名作「ボディ・スナッチャー」を思わせるものですが、酔っ払いによる大騒ぎコメディとなっています。

イギリス郊外の町で生まれ育ったゲイリー・キング(サイモン・ペッグ)は、高校卒業記念に悪友たちと地元の12軒のバーの制覇を試みるも失敗。以来アルコール中毒となり、自由だが社会的な落伍者となっていました。そろそろ40代となり、何とかバーのはしごを成功させて、自分を変えたいと考えたキングは、今では社会的に成功しているかつての悪友、アンディ・ナイトリー(ニック・フロスト)、スティーヴン・プリンス(パディ・コンシダイン)、オリヴァー・チェンバレン(マーティン・フリーマン)、ピーター・ペイジ(エディ・マーサン)を無理やり招集します。

約20年ぶりの故郷は一見なんの変りもないようでしたが、かつてのバーはどこも似たような今時風に改装されていました。それでも、昔を思い出してガヤガヤとビールを一杯ずつ飲みながら4軒目になりました。トイレで地元の少年と喧嘩になった五人組は、彼らが体がバラバラになっても動く人形のような生命体ブランクスであることに愕然とします。

ここまでに感じた違和感、何故か地元の人たちの無反応な様子から、町全体の人々がブランクスに入れ替わっていることに気が付きます。町から脱出する手段が無いため、彼らははしご酒を続けますが、いつの間にかオリヴァーとピーターもブランクスと入れ替わってしまいます。

しだいに襲って来るブランクスの数が増え、入る店々で大乱闘を繰り広げながら、ついにゴールの12軒目の店、ワールド・エンドに到着。しかし、そこはブランクスたちの本拠地だったのです。宇宙から密かにやって来た「ネットワーク」と名乗るエイリアンが、人間の生活にする豊かにするためにIT技術を広め、協力しない人々をブランクスと交換していたのです。

ネットワークは人間のためを思ってやっていることだから協力しろとキングに言いますが、何を言ってもキングは言うことを聞かず、聞く耳を持たず、自由が欲しいだけだと絶叫して拒否するのです。酔っ払いの大騒ぎにあきれ返ったネットワークは、すべての技術を回収し、自分たちの痕跡を焼却して宇宙に帰ってしまいます。

その結果、世界は廃墟となり人々は昔の自然と共生する生活に戻されます。キングは酒を断ち、取り残された悪ガキブランクスを引き連れて町を闊歩するのでした。

というわけで、酔っ払いが宇宙から「親切風」な侵略の魔の手を追い払った話なんですが、その結果世界を救うどころかぶっ壊した結果になっているのが、最大のブラックなジョークかもしれません。ただし、さりげなくクスっと笑いを誘う映画ではなく、かと言って爆笑するようなコメディでもありません。やはり日本人と欧米人の笑いのつぼの違いというのはいかんともしがたいところ。

サイモン・ペッグは、トム・クルーズの「M:Iシリーズ」ではコメディ・リリーフとしては常連ですが、シリアスなアクション物ですからかなり抑えた演技をしていました。そういう意味では、この映画のようなエイリアンにもひるまない破天荒な酔っ払いというのは、彼本来の味なのかもしれません。