2021年10月20日水曜日

渡辺美里 / born 4~愛と感動の超青春ライブ~ (1990)

18歳でデヴューした渡辺美里の、20代なかばまでの元気いっぱい路線を象徴的にあらわしていたのが、毎年夏に行われた西武球場(現メットライフドーム)でのライブ・パフォーマンスです。西武池袋線には、専用のラッピングがされた電車が走ったりして、当時の話題をさらっていたものです。

当然、自分はそこに出かけたりする時間はありませんでしたが、「born」と題されたビデオ・シリーズがあり、これらの中でダイジェスト的にその興奮のステージが紹介され続けました。今でこそ珍しくありませんが、耳で聴く音楽だけでなく目で見て楽しむヴィジュアル・メディアを重視した方向性は20世紀では先駆的な試みだったのだろうと思います。

この頃は、映像作品はビデオテープからレーザーディスクに変わりつつあり、そしてDVD普及前夜というところ。自分の場合、レーザーディスクで楽しんだのですが、DVDレコーダーが登場した時に、その内容を録画していていました。

その画像は、YouTubeなどで見かけるビデオテープから起こした映像と一緒でかなり劣悪なのですが、なんとか我慢できるレベル。bornシリーズはなんだかんだで第1集から第10集まであったと思いますが、その後DVD化されて再発売されましたが、いずれも目を疑うようなプレミア価格がついています。

その中で、最もすごいライブが1989年7月26日の映像が記録されたこのディスクです。ファンの間では大変有名なライブで、実は中止になった講演の様子を収めたものなんです。始まる前から、今で言うゲリラ豪雨状態で、雷も発生。消防署からの勧告もあって、ライブは中止に決定。しかし、豪雨の中に集まった数万人の観客に対して何もしないわけにはいかない・・・

カメラにとらえられる雨が降っている時というのは、実体験ではシャワーを浴びるような量の水が落ちてくる状況。ステージに飛び出した渡辺美里は、「パイナップ・ロマンス」を水しぶきを振り散らして熱唱。そこでスタッフから中止のアナウンス。もう一曲だけという美里の願いで、「すき」が空が雷で光る中で歌われます。

どうしてもステージを去りがたい渡辺美里は、代表曲「My Revolution」を観客の大合唱と共にアカペラで歌いました。このたった3曲だけですが、まさに「愛と感動の超青春」の伝説ステージとなったのです。

もしも、ライブを最後まで強行していたら、激しく歌い踊るのですから、雨によって体温を奪われ低体温症になったことは間違いなく、場合によっては命にかかわる可能性もあるかもしれません。また、電気楽器類は故障し感電事故もおきたかもしれない。

一応、YouTubeや西部球場ライブをまとめたライブDVD集などで見ることはできます。ファンは必見、ファンではなくてもこんなすごいパフォーマンスができる渡辺美里を認識するために一度はみてもらいたいと思います。