映画として「最終楽章」というタイトルになりますが、スタートは言わずと知れた2006年のテレビドラマ。その後、2008年に「新春スペシャル in ヨーロッパ」が2夜にわたってスペシャル・ドラマとして放送されました。クラシック音楽の世界で、ラブ・コメ青春根性ストーリーを展開するという、今まで無かった世界が大ヒットしました。
原作は二ノ宮知子のマンガで、当初岡田准一がキャスティングされたのですが、ジャニーズ事務所の強引な要望を二ノ宮が拒否したことで、製作は1年遅れになったというのは知る人ぞ知る有名な話。シリーズを通して脚本は衛藤凛、監督は武内英樹と川村泰祐が勤めています。
ストーリーは比較的原作に忠実に進みますが、マンガ的な演出も頻出しているのも特徴的。またそれぞれの登場人物の実写版としての再現度もかなり高いため、原作ファンからも好感を持たれた作品になりました。
連続ドラマでは、天才的ピアノ技巧を持つにもかかわらず音楽は楽しければ良いと向上心の無い音大生、のだめこと野田恵(上野樹里)と、指揮者を目指していますが飛行機恐怖症のため海外に行けず鬱々としてるエリート、千秋真一(玉木宏)が、たまたまアパートが隣同士だったところから始まります。
音大に客員として招聘された世界的指揮者シュトレーゼマン(竹中直人)は、のだめと千秋に目をつけます。音大の落ちこぼれを集めてSオーケストラを結成し、千秋を副指揮者にすると練習は千秋に任せっぱなしで、自分はキャバレー通い。千秋は直観力だけで弾くのだめのピアノに感心しますが、それだけではだめだと感じます。のだめも千秋と一緒にいたいがために、努力することを決意するのでした。
定期演奏会で、優秀者から選抜されるAオケの前座としてSオーケストラが登場するのですが、シュトレーゼマンは直前になって後は千秋に任せると去ってしまいます。しかし、初めての千秋の指揮は音楽は楽しいものだということを体現した演奏で大成功になるのでした。
のだめも初めてコンクールに出場し、予選では審査員をうならせる演奏をするのでしたが、最終審査で熱を出したことでめちゃめちゃになってしまいます。しかし、のだめの才能を見抜いたフランスの著名なオクレールにより、フランスで勉強するように勧められるのです。のだめは素人催眠術で千秋の飛行機恐怖症を何とか克服させ、二人はヨーロッパに出発するのでした。
で、次はヨーロッパ編。スペシャルでは指揮者コンクールで、ライバルとなるジャン・ドナデュウと戦い、千秋は優勝を勝ち取ります。シュトレーゼマンの策略で、彼の助手として世界各地を演奏旅行して回ることになるのです。のだめはパリの音楽院でオクレールの指導を受けることになりましたが、あまりにも自分の知識不足・経験不足に落ち込む毎日を送るのでした。
さらに追い打ちをかけたのがシュトレーゼマンの代役で千秋が指揮をしたピアノ協奏曲の大成功の知らせでした。ピアノを弾いたのはのだめと同世代の孫ルイ(山田優)で、のだめはルイの演奏に追い付こうと自分をさらに苦しめてしまうのです。しかし、教会の讃美歌にであったのだめは再び音楽は楽しむものだと思い出し、オクレールの推薦で古城で行われる貴族のコンサートで初めてリサイタルを行い大喝采をもらうのでした。
そして、ついに完結編の映画となるわけです。あの孫ルイが音楽院に入学してきて、のだめは再び心乱れる毎日。コンクールでは勝ったのに、ジャンは人気のデシャン管弦楽団の常任指揮者になり、千秋は落ち目のマルレ管弦楽団に迎えられます。マレル管は、団員が減ってしまいボロボロでしたが、千秋の熱意が次第に次第に伝わり、何とか軌道に乗っていきます。
のだめはオクレールから次々に課題を出されるものの、コンクールへの出場は許可されず、千秋との差がどんどんひろがっていくことに焦るのです。シュトレーゼマンはオクレールには黙ってのだめを自分の指揮の演奏会に引っ張り出してしまいます。のだめは渾身の演奏を行い大喝采となるのですが、燃え尽きてしまい行方をくらましてしまうのでした。
てなわけで、大好評につき膨大なボリュームのシリーズとなったわけですが、クラシック好きにとっては、最初から最後まで十分すぎるほど楽しめました。出てくる曲も人気曲だけでなく、おーそれを使うかというマニアックなものまで多彩で、なかなかの選曲です。でも、ストーリーの面白さがあるので、クラシックを聞かない人にも問題なく刺さったのはうなづけるところ。
それにしても玉木宏でよかった。岡田クンは好きですけど、千秋が岡田クンだと、かなり残念な結果になっていたかもしれません。