原作は平庫ワカによるマンガですが、文学作品のような硬派な内容です。監督はタナダユキ、共同脚本はタナダユキと向井康介。主演の永野芽郁にとっては、おそらくチャレンジングな作品となっています。
トモヨ(永野芽郁)は、ブラックな職場でもマイ・ペースで仕事をしていましたが、ある日、テレビのニュースで親友のマリコ(奈緒)が自殺したことを知ります。二人は、小学生以来の付き合いで、トモヨは親からの虐待を受け続けるマリコにずっと寄り添ってきたのでした。
トモヨは急いで駆けつけますが、すでに遺体は焼かれ遺骨は親の元に送られていました。トモヨは、急いで郷里のマリコの家に向かいます。そして、遺骨を見つけると父親に包丁を振り回して、「マリコを苦しめ続けたお前に遺骨は渡さない」と叫び、遺骨を持ったまま窓から裸足で飛び出すのです。
衝動的な行動に走ったものの、どこに行くのか悩むトモヨでしたが、以前、二人でいつか行こうと約束した「まりがおか岬」を目指すことにします。交通機関を乗り継いで、やっと人気のない目的地に到着したトモヨでしたが、バス停を降りてすぐにバイクに乗った男にバッグをひったくられてしまうのです。
たまたま通りかかったマキオ(窪田正孝)は、遺骨を置いて男を追いかけていくトモヨにかわって遺骨のそばにいることにします。戻ってきた一文無しになってしまったトモヨに、マキオはお金を渡して去っていきます。
翌日、トモヨは岬に立ち、いつもマリコのためにいろいろ行動して、いろいろい考えていたのに、自分に一言も言わずに死んでしまった友人に悲しみをつのらせるのです。「黙って死なれるのがどんだけ辛いものか、あなたにも同じ目に合わせてあげる」と地面に置いた遺骨に言うと・・・
これまでの永野芽郁の演じてきたものからは想像もできない激しい役柄で、言葉遣いも汚いし、何と喫煙シーンも度々出てきます。マリコが虐待を受け続けてきたことは明示的に何度も登場しますが、精神が崩壊してしまうマリコをずっと見守ってきたトモヨのことは、ほとんど語られていません。
つまり、マリコの生き方の裏返し、いや相似形のようなトモヨについては、どんな生活をしてきたのかは与えられるシナリオが無いところが、演じる側には大変だっただろうと想像します。しかし、映画の中でトモヨという人物の存在感を感じさせてくれたのは永野芽郁の演技力の賜物と言えそうです。
それまで、絶望しかない展開が続いていましたが、マキオの登場でトモヨとマリコの二人に少しずつ光が射すような雰囲気が醸し出され、少なくとも少なからず希望を残したエンディングになったことは映画の作り方として喜ばしい感じがしました。