監督・脚本は「君の膵臓をたべたい」の月川翔で、最新作は大泉洋主演の「ディア・ファミリー」ですから、純愛物専門というわけではないようです。
高校三年の岡田卓也(北村匠海)は、ずっと病気で入院している渡良瀬まみず(永野芽郁)に送る色紙を渡す役をさせられたものの、一度も本人にはあったことがありませんでした。病室で色紙を渡すと、まみずは「私、余命ゼロなんだ」と言って卓也を驚かせます。
そして、父親から貰ったという大事にしているスノードームを、卓也は落として壊してしまいます。お詫びとして死ぬまでにしておきたいことを書いたリストを見せられ、病室から出ることができない自分に代わってやってくれるように頼まれるのです。
卓也は、一人で遊園地に行き猫耳をつけてジェット・コースターに乗ったり、食べきれないほど大きなイチゴパフェを食べたりして、病室に戻っては報告するのでした。次の頼みは、徹夜して並んで最新のスマートホンを買ってきてというものでした。夜中に家を出ようとすると、母親(長谷川京子)に呼び止められます。
卓也は「ちょっと出てくる」と言うと、母親は鳴子(松本穂香)もそう言って出て行って帰らなかったと語気を強めます。実は、交通事故で亡くなった卓也の姉の鳴子は、付き合っていた彼が発光病で亡くなり、それ以来死ぬことばかりを考えていたらしいのです。以来、卓也も何事にも無気力になっていたのでした。
スマートホンを手に入れたことで、まみずは街の様子などをリアルタイムの動画で楽しむことができるようになりました。そして次の頼みは、離婚してから一度も会っていない父親に離婚の理由を聞いてきてほしいというものでした。
卓也はまみずの父親、深見(及川光博)から、借金の返済が及ばないようにするための離婚で、まみずに会うと債権者に偽装離婚であることがばれるから会うわけにいかないと話します。まみずは両親が喧嘩して別れたわけでないことを知ると安心しますが、そこまで気を使ってもらっても自分の病気が治ることはないと言うのです。
卓也は、満月がきれいな夜に、こっそり病院を訪れますが担当看護師の岡崎(優香)に見つかってしまいます。しかし、「ずっとここに閉じ込めておく方が残酷だ」と言って病室に入ると、まみずを屋上に連れて行き美しく光る月を一緒に見るのです。しかし、月の光によって病が勢いを増し、まみずの体が白く輝き倒れてしまうのでした。
病気で死んでいく苦しみを持つまみずと死なれたことで苦しむ姉という、二人の辛さの狭間で生き残る者がどうすれば良いのかという答えを探すことがテーマのようです。生き残ることも違った苦しさがあるわけで、もちろん正解というのははっきりした形ではわからなくて当然でしょう。
卓也にやりたいことを代行してもらうことで、死ぬことばかりを考えていたまみずはこの世の未練を断ち切るつもりでしたが、逆に生きたいという気持ちを強く持つようになり、同じ死を迎えたとしても(少しかもしれませんが)前向きに受け止めることができたというところに救いがあります。
月夜に光り輝くのは、死が迫っている象徴なんですが、あまり露骨に光られると興覚めしてしいそうなんですが、そこんとこはほんのりと演出したのは正解だと思います。
月夜に光り輝くのは、死が迫っている象徴なんですが、あまり露骨に光られると興覚めしてしいそうなんですが、そこんとこはほんのりと演出したのは正解だと思います。