年末年始診療 12月29日~1月5日は休診します

年内は12月28日(土)まで、年始は1月6日(月)から通常診療を行います

2024年12月9日月曜日

違国日記 (2024)

ヤマシタトモコのマンガが原作ですが、マンガとしては文芸小説に近い内容で、評判は高く「BOOK OF THE YEAR コミックランキング」では1位となったことは、ちょっと驚きます。監督は瀬田なつきで、脚本・編集も自ら手掛けています。

中学3年生の田汲朝(早瀬憩)は、突然の交通事故で両親を目の前で亡くしてしまいます。朝の母親の妹である人気小説家で人見知りの高代槙生(新垣結衣)は、行き場を無くした朝を勢いで引き取ることにしてしまいました。しかし、槙生は朝の母親のことは小さいころから大嫌いで、朝にも「死んでも嫌いな気持ちは変わらないけど、あんたのことを踏みにじることはしない」と伝えます。

とは言え、どうしていいかわからなかったので、元カレで今も友人として付き合いがある笠町(瀬戸康史)の助けを借りて後見人として手続きを進めます。片付けが苦手な槙生のマンションの部屋はゴミ屋敷状態でしたが、しだいに朝が掃除をしてくれるようになるのです。槙生の中学からの友人である奈々(夏帆)も、心配して二人の間を取り持ってくれるのでした。

高校に入学した朝は、中学からの友人や新しくできた友人たちと表面的には少しずつ楽しさを取り戻していきます。しかし、両親のことを忘れることができるわけではなく、また槙生が母を憎む理由がわからず、積極的に自分を表に出せないままでした。

ある日槙生は、母親から姉の遺品として日記を託されます。書き出しに「朝が高校を卒業したら渡そうと思っている」と書かれていたため、それ以上見もせずにすぐにしまい込んでしまいました。しかし、朝に日記の存在を知られてしまいます。槙生と朝は、それぞれもうこの世にいない姉、あるいは母のことをあらためて知りたくなるのでした。

30代になり結婚もした新垣結衣は、かつての可愛い役から脱皮し、比較的硬派な役どころを演じるようになってきましたが、この作品はさらに一歩踏み込んだ「女性の生きづらさ」みたいな難しい演技を見せることになりました。

槙生は、こどもの頃から姉に自分を否定され、世間とのごく普通の交流を避けてきた女性です。人見知りで、自分を見せる理由がないため、部屋はゴミだらけ、身なりもあまり気にしない。それなのに、憎んでいた姉の娘、しかも一番多感な時期の姪を引き取り共同生活をすることになる。

新垣結衣の演技には曇りが無くさすがと思うのですが、それは新人の早瀬憩のごく自然な演技があってのこと。突然両親を亡くすというショッキングな出来事に泣き叫ぶでもなく、まずはこの先どうなるのかという不安が押し寄せ来る。しかし、何かと母の姿や声を思い出し、悲しさがだんだん実感されてくるところは、実年齢の役とはいえ早瀬の演技力も素晴らしいものがあり将来が楽しみです。