いや~、がらにもなく苦手な恋愛物を見てしまった。
正確には真正面からラブラブを描いていないので、だいぶひねりが効いているんですが、原作は川村元気の小説。山田智和の初監督作品で、脚本に原作者も名を連ねています。
大学病院で精神科医師として働く藤代俊(佐藤健)は獣医の坂本弥生(長澤まさみ)と結婚式の準備中でした。時計が0時をまわって、4月1日生まれの弥生に誕生日おめでとうを伝えると、弥生は「愛を終わらせない方法は?」と俊に謎をだします。そして、二人とも就寝します。
翌朝、俊が目覚めると弥生の姿がどこにもいない。突然、いなくなり、理由も行き先もわからず、俊はいろいろ探してみるものの、しだいに憔悴するだけでした。
そこで、学生時代の恋人であった伊予田春(森七奈)から10年ぶりに手紙をもらったことを思い出します。弥生にも見せていたので、それが原因とも思えなかったのですが・・・
10年前大学の写真部に新人として入部したのが春でした。形として見えない物を写真に撮りたいという春に、次第に惹かれていった俊は、二人で世界各地の有名な朝日が見える場所に一緒に行くことにしました。しかし、出発の日、春は独りになれない父親(竹野内豊)を放り出すことができず、二人は別れることになってしまったのです。
春から届いた手紙は、二人が一緒に行こうとしていた外国からのもので、計画していた朝日の写真が添えられていたのです。
数か月して、弥生からの手紙が届きます。そこには、しだいに愛することを怠けていた二人がいたことが書かれ、愛を終わらせない方法は手に入れないことだと書かれていました。そして、昔の仲間から千葉のホスピスで春が亡くなったという知らせが入ります。
ホスピスを訪ねた俊は、スタッフから春が愛用していたフィルム・カメラを渡されます。大学の写真部の部室を使わせてもらい、カメラに残っていたフィルムを現像してみると・・・その中の写真の一枚に弥生が写っていたのです。
愛を終わらせない方法は、手に入れないこと・・・というのは、ずいぶんと含蓄のある言葉ですが、手に入れれば新しい段階の愛が始まるという考え方もできると思います。この二人は、お互いに愛を手に入れることに臆病だったのかもしれません。その結果、女は物理的に逃げ出してしまい、実は男も精神的に逃げていたんでしょうね。
春との関係も、手に入れなかったことで、心のどこかで愛が続いていたことは確かにありそうですが、少なくとも春は計画していた旅行を一人で実行することで完全に終わらせる決意をしたということ。その春のおかげで、俊も一歩も二歩も前進することができるようになるということなんだと思います。
恋愛物は苦手なので普通は見ないんですが、役者がいいので最後まで鑑賞できました。こういうドラマチックな経験はしたこともないので、自分とはまったく重ならないのが残念ですが、恋愛物はそういうものなのでしょうがありません。