海帝高校はエリート家庭のこどもが集まる男子校で、生徒会に出入りできる者は、将来日本の政治経済の中枢を担うことが約束され、その頂点に立つ生徒会長は多くが総理大臣となっているのです。トップの成績で入学した赤場帝一(菅田将暉)は、クラスのルーム長となり生徒会に参加することになります。
赤場の父、官僚の赤場譲介(吉田鋼太郎)は総理の信任が厚いものの、かつて海帝高校の生徒会会長選挙で敗れた東郷卯三郎(山路和弘)の下で忸怩たる思いの毎日を送っています。譲介は帝一に英才教育をほどこし、生徒会長となって将来自分の国を作ることを厳命していました。
帝一は幼少の頃から東郷の息子、菊馬(野村周平)にいじめられていましたが、白鳥美美子(永野芽郁)に助けられ、美美子も帝一が弾くピアノが大好きでした。しかし帝一はピアノを封印し、生徒会長を目指す決断をしたのです。親友で副ルーム長に指名した榊原光明(志尊淳)を伴って帝一が初めての生徒会に出席すると、菊馬もルーム長として出ていましたが、もう一人、大鷹弾(竹内涼真)というライバルの存在を認識しました。
何かと姑息な手段に出る菊馬と違い、大鷹は明るく豪快で、野心しか見えない生徒会メンバーの中で異彩を放つ誰にも好かれる好男子という存在でした。帝一は、当初敵対心を強くしますが、次第に打ち解け友人と言える仲になります。
秋になり、2年生の中から来年の生徒会長を選ぶ時期になりました。もっとも現生徒会に近い考えを持ち、第一本命と言えるのはロン毛金髪の氷室ローランド(間宮祥太郎)でした。帝一は、氷室に取り入り彼の選挙活動を応援することにします。大鷹が応援に回ったのは、穏やかで地味ですが、全校生徒を平等に扱えるように生徒会の改革を謳う森園億人(千葉雄大)です。
氷室は人気のある大鷹を怖れ、帝一の助言で氷室陣営に引き込むため経済的に苦しい大鷹家への援助を持ち出しますが、大鷹はきっぱりと断るのです。菊馬は帝一が氷室に可愛がられるのが不愉快で、氷室の父親が帝一の父親の政策立案により商売が苦しくなったことを告げ口します。氷室の元では生徒会長への道が閉ざされてしまうと悟った帝一は、森園陣営に頭を下げるのでした。
マンガですからかなり荒唐無稽な話ですが、「大人の世界」の縮図みたいなところが面白い。ひとたび金が絡むと人間のいやらしさが表に出て、またそれが諸刃の刃となって戻ってくる怖さが端的に描かれています。
野心の塊のような帝一ですが、彼の人間としてのやさしさを保たたせているのが美美子の存在で、スキャンダルを怖れる帝一が度々彼女の家の前で、海帝高校の様子を伝えるのに使うのが糸電話というのが気が利いています。そして、帝一が「自分の国」を作りたい本当の理由・・・これがなかなか良い。これがわかると絶対に帝一を応援したくなるかもしれません。
それにしても、主役級若手俳優を惜しげもなく大量投入して、それぞれの持ち味も引き出した監督の技量はなかなかのもの。ギャグに溺れてしまうことなく、全編ハイテンションで走り切った作品と言えそうです。
最後にエンディング・テーマのクリープハイプ「イト」のメロディに乗って、フェンダーのストラットキャスターを抱えたまま永野芽郁が踊る美美子ダンスが超絶可愛い!! 公開時、これが受けて真似する動画がたくさんアップされたようです。