もう、17年も前になるドラマですね。この頃までは某テレビ局も勢いがあって、確かに面白い力の入ったドラマを作っていました。これは「プリンセス・トヨトミ」のようなファンタジー系小説を書く万城目学の小説が原作で、相沢友子が脚本、演出は鈴木雅之が中心になって作られました。
小川孝信(玉木宏)は、生まれてこのかた不運続きで、何事に対しても後ろ向きに考える陰性キャラ。大学の研究室で、何かとトラブルの責任を押し付けられ、教授から君は神経衰弱だと言われ、奈良女学館高校の理科の臨時教員としてていよく追い出されてしまい、付き合っていた彼女にもふられてしまうのです。
飲み屋もしている下宿先には、高校の同僚となる歴史教師の藤原道子(綾瀬はるか)や美術教師の福原重久(佐々木蔵之介)らも住んでいました。担当したクラスには堀田イト(多部未華子)という不思議な生徒がいました。小川の初日に遅刻してきた堀田に理由を聞くと、いきなり「先生は嫌いです」と言われてしまいます。
小川が奈良公園でボーっとしていると、一頭の鹿が近づいてきました。驚いたことに、鹿は小川に話しかけてきたのです。「あんたは運び番に選ばれた。60年に一度の鎮めの儀式をしなければならないので、あんたは狐の使い番から人間がサンカクと呼んでいる目を受け取らなければならない」と言い、最近始まった群発地震は大鯰が暴れているためで、儀式をしないと大鯰の封印が解けて日本は壊滅すると説明しました。
神経がまいっていると自分を納得させる小川ですが、次から次へと起こることで鹿の言うことを信じるしかならなくなります。奈良女学館は、京都女学館、大阪女学館という姉妹校があり、奈良は鹿、京都は狐、そして大阪では鼠が大鯰の尾をおさえる役目を担っていました。
話す鹿は、三校恒例の対抗体育祭で狐の使い番から目を受け取れと言いますが、狐の使い番と思われた京都のマドンナ先生と呼ばれている長岡先生(柴本幸)から小川が受け取ったのは菓子の八つ橋の包みでした。体育祭の優勝盾が三角形であったため、小川はその盾がサンカクだと考えます。自分が顧問になった剣道が優勝の鍵となることから、小川は剣道上級者の堀田を何とか協力させるのです。
様子がおかしい小川を問い詰めた藤原は、小川の説明を信じることにして、サンカク探しに協力するのです。藤原も歴史好きが高じて周りの空気が読めずに、たくさんの失敗をしてきた過去があります。小川への好意が勘違いかもしれないという思いを抱きながらも、二人は消えたサンカクの謎に迫っていくのでした。
素晴らしいのは話す鹿です。これは少しだけ動く全身のものと、話すときのアップ用の首から上だけのアニマトロニクスが製作されています。動き回っているところはCGで作られているという映画ばりの手の込みようです。これが実にリアルで、本当に生きている鹿が演技しているようです。ちなみに、鹿の声を担当しているのは山寺宏一です。
音楽もかっこいい。担当したのは、「仮面ライダー」シリーズや「戦隊もの」で活躍する佐橋俊彦で、ここでもめいはりのきいたびしっとした音楽が実に心憎い。映像は全体に黄色がかった色調に統一されていて、ファンタジー調を強めているのも興味深いところです。
「のだめ」で人気急上昇の玉木宏もさることながら、綾瀬はるかもこの年は映画も多くのりにのっている時期です。他にも話題性のある多部未華子というキャスティングもはまっています。脇を固めているのは、教頭の児玉清、学年主任の篠井英介、校長の田山涼成なとのベテラン勢です。
とにかくドラマとしての出来はかなり高評価できます。邪馬台国や卑弥呼の謎もからまった内容は、単なるミステリー・ファンだけでなくを超えて古代史ファンにも十分に楽しめる内容になっていると思います。ちなみに「あおによし」は、奈良にかかる枕詞で、古都・奈良の美しさを褒めたたえる言葉として使われます。