1975年リリースの「Blood on the Tracks」は、ボブ・ディランの名盤として不動の地位を保っていますが、何しろディランの創作意欲が極限に高まった時期のアルバムです。だからというわけではないでしょうが、収録曲は全般に長めのものが多い。
「Idiot Wind」が7分48秒で、主として妻との関係が悪化したことに端を発する内容のように思われてしまうのですが、ディラン自身はやり過ぎたと反省しているらしい。もう一つ長尺なのが8分51秒のこの曲で、ある意味典型的なディランの寓話型の歌詞になっています。
祭が終わりギャングは次の計画を始めていた 壁を壊す音以外はキャバレーは静かだ
外出禁止令は解除され賭博場は閉店 まともな奴は皆町から出ていった
彼は入口に立っている まるでハートのジャックのように
彼は鏡の間の奥に行くと、全員の席を用意するように言った
彼は鏡の間の奥に行くと、全員の席を用意するように言った
全員が一瞬だけ振り返った 彼は見知らぬ男にショーの時間を尋ねた
彼は角に行き顔を伏せた まるでハートのジャックのように
舞台裏で女たちがポーカーをしている リリーの手にはクイーンが2枚
通りに人が集まり始め窓は開いている 穏やかな風は室内でも感じた
リリーが引いた次のカードはハートのジャックだった
ダイヤ鉱山の持ち主ビッグ・ジムは馬鹿じゃない いつも立派な身なりだ
舞台裏で女たちがポーカーをしている リリーの手にはクイーンが2枚
通りに人が集まり始め窓は開いている 穏やかな風は室内でも感じた
リリーが引いた次のカードはハートのジャックだった
ダイヤ鉱山の持ち主ビッグ・ジムは馬鹿じゃない いつも立派な身なりだ
用心棒を連れ銀のステッキを持ち髪型はきまってる 欲しければ何でも手に入る
だが用心棒も銀ステッキもかなわない ハートのジャックには
ローズマリーは馬車で町に向かう 王冠を外した女王みたいに裏から忍び込んだ
派手なつけまつげでジムに遅れて御免なさいと囁く でも彼は聞いちゃいない
だが用心棒も銀ステッキもかなわない ハートのジャックには
ローズマリーは馬車で町に向かう 王冠を外した女王みたいに裏から忍び込んだ
派手なつけまつげでジムに遅れて御免なさいと囁く でも彼は聞いちゃいない
彼がぼんやりと宙を見つめている先にはハートのジャック
メキシコで見たか、あるいは指名手配写真の中の顔だとジムは考えた
メキシコで見たか、あるいは指名手配写真の中の顔だとジムは考えた
その時観衆が足を鳴らし灯りが消えた 暗闇に残ったのは彼とジム
彼らが見ていたのは蝶が引き当てたカード それはハートのジャック
リリーは王女のように可愛い やるべき事をして微笑みは輝いた
家庭は複雑でいろいろな恋を経験した いろいろな男たちといろいろな場所で
リリーは王女のように可愛い やるべき事をして微笑みは輝いた
家庭は複雑でいろいろな恋を経験した いろいろな男たちといろいろな場所で
でも彼女はこんな男は初めて会った それはハートのジャック
いつのまにか判事が食事をしていた 壁を壊す音は相変わらず続いている
いつのまにか判事が食事をしていた 壁を壊す音は相変わらず続いている
リリーの指輪はジムからの贈り物 リリーと王様の間を裂くものはない
いや、ないはずだった ハートのジャックを除いて
酔ったローズマリーは自分が映るナイフを見る ジムの妻役に疲れ果てたのだ
いや、ないはずだった ハートのジャックを除いて
酔ったローズマリーは自分が映るナイフを見る ジムの妻役に疲れ果てたのだ
死のうとしたこともあるけれど、その前に一つでも善いことをしたかった
彼女は未来をみていた ハートのジャック次第で
ドレスを脱いだリリーは彼に言う 運命ね、わかってたでしょう?
彼女は未来をみていた ハートのジャック次第で
ドレスを脱いだリリーは彼に言う 運命ね、わかってたでしょう?
ペンキ塗りたての壁に注意して 聖人みたいなあなたに生きて会えてよかった
廊下の向こうから足音がする ハートのジャックを追いかけて
舞台監督はいらついていた 何か変だ 嫌な予感がする
舞台監督はいらついていた 何か変だ 嫌な予感がする
判事を呼びに行ったが彼は酔いつぶれていた 修道士役の俳優が通り過ぎた
他にまともな俳優はいない ハートのジャックを除いて
リリーは愛する男に抱きついた 彼女を追いまわす嫌な男は忘れていた
彼は会いたかったという彼女の言葉を信じたが、ドア越しの嫉妬は知らなかった
リリーは愛する男に抱きついた 彼女を追いまわす嫌な男は忘れていた
彼は会いたかったという彼女の言葉を信じたが、ドア越しの嫉妬は知らなかった
それもまたありふれた出来事にすぎない ハートのジャックの人生にとって
詳しくはわからないけど事態は急展開 ドアが開いて拳銃が向けられた
落ち着いた様子のビッグ・ジムだった 隣には目が据わったローズマリー
でもローズマリーの心はジムから離れていた ハートのジャックへと
二部屋向こうでついにギャングは壁を壊して隣の銀行から大金を手に入れた
ギャングたちはまっ暗な川辺で、もう一人の仲間を待っていた
やるべきことがあったが動けない ハートのジャック抜きでは
明日は死刑執行の日 ナイフが刺さったビッグ・ジムの死体が横たわっていた
詳しくはわからないけど事態は急展開 ドアが開いて拳銃が向けられた
落ち着いた様子のビッグ・ジムだった 隣には目が据わったローズマリー
でもローズマリーの心はジムから離れていた ハートのジャックへと
二部屋向こうでついにギャングは壁を壊して隣の銀行から大金を手に入れた
ギャングたちはまっ暗な川辺で、もう一人の仲間を待っていた
やるべきことがあったが動けない ハートのジャック抜きでは
明日は死刑執行の日 ナイフが刺さったビッグ・ジムの死体が横たわっていた
絞首台のローズマリーは落ち着いていた 今日の判事はしらふだ
その場から姿を消していたものが一人いた ハートのジャックだ
キャバレーは空っぽで修理のため休業中という看板が出ていた
素に戻ったリリーは、忘れていた父親、ローズマリー、そして法のことを考えた
でも何よりも心にあったのはハートのジャックのことだった
(意訳 : 亜沙郎)
読んでみると、これはさすがにわかりやすい。完璧なストーリーがあって、起承転結がはっきりしています。軽快なリズムに乗って、この長い話がするすると語られていきます。
イメージとしては、まさに西部劇の世界。埃が舞うメインストリートの両側に、酒場、雑貨屋、保安官事務所、ホテル、売春宿、賭博場とキャバレー、そしてその隣には銀行が並んでいる。
ギャングたちは今では閉店している賭博場の壁をぶち抜いて隣の銀行から金を奪おうとしている。その時、町の名士であるビッグ・ボスが妻のローズマリーを伴って店にやって来るのですが、ローズマリーは夫がキャバレーの踊り子のリリーにご執心なのが面白くない。しかしリリーが夢中なのはハートのジャック。そして悲劇が起こってしまいます。
ここで気になるのは、ハートのジャックとは何者なのかという点です。おそらくギャングのボスで、リリーとローズマリーが一目ぼれしたくらいですから、おそらく相当なイケメンで恐ろしく腕っぷしのきく男。これだけのストーリーが作れるのに、実際の映画の脚本となるとからっきしダメなのがディランの不思議な所です。
深読みする必要はありませんが、印象派絵画みたいな歌詞だけでなく、こういうのもあるという良い見本かなと思います。そのわかりやすさもあってか、長い歌のわりには何人かによってカバーされています。ジョーン・バエズはライブ・アルバムに収録し、他にもメアリー・リーズ・コルベット、トム・ラッセルらによって聴くことができます。
キャバレーは空っぽで修理のため休業中という看板が出ていた
素に戻ったリリーは、忘れていた父親、ローズマリー、そして法のことを考えた
でも何よりも心にあったのはハートのジャックのことだった
(意訳 : 亜沙郎)
読んでみると、これはさすがにわかりやすい。完璧なストーリーがあって、起承転結がはっきりしています。軽快なリズムに乗って、この長い話がするすると語られていきます。
イメージとしては、まさに西部劇の世界。埃が舞うメインストリートの両側に、酒場、雑貨屋、保安官事務所、ホテル、売春宿、賭博場とキャバレー、そしてその隣には銀行が並んでいる。
ギャングたちは今では閉店している賭博場の壁をぶち抜いて隣の銀行から金を奪おうとしている。その時、町の名士であるビッグ・ボスが妻のローズマリーを伴って店にやって来るのですが、ローズマリーは夫がキャバレーの踊り子のリリーにご執心なのが面白くない。しかしリリーが夢中なのはハートのジャック。そして悲劇が起こってしまいます。
ここで気になるのは、ハートのジャックとは何者なのかという点です。おそらくギャングのボスで、リリーとローズマリーが一目ぼれしたくらいですから、おそらく相当なイケメンで恐ろしく腕っぷしのきく男。これだけのストーリーが作れるのに、実際の映画の脚本となるとからっきしダメなのがディランの不思議な所です。
深読みする必要はありませんが、印象派絵画みたいな歌詞だけでなく、こういうのもあるという良い見本かなと思います。そのわかりやすさもあってか、長い歌のわりには何人かによってカバーされています。ジョーン・バエズはライブ・アルバムに収録し、他にもメアリー・リーズ・コルベット、トム・ラッセルらによって聴くことができます。
