2013年11月にリリースされたのが、これまでのすべてのアルバムをまとめた巨大ボックス・セットです。
当時コロムビア・レコードはこの手の企画をたくさん立ち上げていて、クラシックならピアノの巨匠、ウラジミール・ホロヴィッツやグレン・グールド、ジャズならマイルス・デイビスなどの巨大ボックスが飛ぶように売れました。
これらはデジタル化、ストリーミングの流れを受けて、アナログな存在であるオールド・メディアを売れるうちに売り切ってしまおうという、他のレコード会社にも共通した流れでした。
特定のアーティストのすべての音源を、格安に手に入れられるチャンスだったので、自分もたくさんボックス・セットを購入しました。ただし、今となっては保管場所に困るという、最初から分かり切っていた悩みを抱えることになってしまいました。
ボブ・ディランの場合は、1962年のデヴュー作から2012年の「Tempest」まで、正規に発売されたスタジオ・アルバム、ライブ・アルバム全40タイトルがCD45枚(CD2枚組を5セット含む)に収められています。
また、ディラン自身が自分のアルバムとしては認めずに廃盤にした、1973年の「DYLAN」が初CD化され復活しているのは、評価されるポイントかもしれません。「Greatest Hits」や「Biograph」などのコンピレーションは含みません。
そしてコンピレーションだけに含まれるもの、シングル盤としてだけ発売されたものなどを集めた「Side Tracks」と題された2枚組が追加されていて、「The Bootleg Series」や「Live Recordings」のシリーズで陽の目を見たものを除くと、ほぼすべて(公式リリースされてこのボックスに含まれないのは10数曲)のディランの音源がまとまります。ちなみに日本でだけ、「Side Tracks」は単独でも発売されました。
ディランの自伝も「Chronicles Vol.1」となっていましたが、このボックスもわざわざ「Vol. One」と付いているのは、ちょっとした洒落みたいなもので、ディランのセンスなのかレコード会社のものかはわかりません(Vol.2が出ることはたぶん無い)。これ以降に発売されたものは個別に手に入れるしかありませんが、実売3万円程度ですべて揃ってしまうのは優れたコストパフォーマンスです。
日本国内盤は日本語の解説が付きますが、中身はアメリカまたはヨーロッパからの輸入盤です。紙ジャケット仕様なのがマニアには嬉しいところ。輸入物の紙ジャケットは粗悪なものが多いのですが(日本盤が丁寧すぎるのかもしれません)、このセットは比較的まともなので安心です。付属のハードカバーのブックレットには詳しいトラックリストやレコーディング・データが満載です。
内容はすべて2003年以降にリマスターされていて、基本的に音質については特に問題はありません。よほどのオーディオ・マニアでなければ、特に不満を感じることはないと思います。例えば、これまで書いてきた記事の内容を、音で確認するにはこれほど最適なセットはありません。
と、良いことづくめみたいに書いていますが、すべてを「持っている」こととすべてが「わかる」ことは違います。特にディランの場合、一度や二度聴いただけだと「何だこりゃ」となる場合も少なくないし、英語の歌詞がわからないのでなおさらです。やはり聴き込む必要があるし、聴き込む価値があるアーティストだと思いますので、このようなセットは飾っておくだけでなくフルに利用することを強くお勧めします。

